今週は「坂の上の雲ミュージアム」からの生放送!21日(日)開催の「秋山真之祭2021」を前に、学芸員の川島佳弘さんに様々な角度から真之の人物像についてお話を伺いました。日本海軍の中枢で重責を果たす軍人として、名文を多く手掛けた名文家として、また家族をとても大切に思っていた一面など、多彩なエピソードを御紹介頂く中で、妻・季子(すえこ)だけに見せた顔とは。

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佐伯)手元には秋山真之と女性が写っている写真の資料をお持ちいただいているんですけれども、これは何の写真になりますか?

川島)はい、それはですね、秋山真之と奥様の季子さんという方の新婚当時だと思うんですけどね、その時の写真になります。

佐伯)じゃあ結婚の記念写真みたいな感じなんでしょうか?

川島)そうですね、だろうと思います。

佐伯)えーと、真之さんが何歳で結婚されたんですかね?

川島)真之はですね、明治36年、36歳の時に結婚しました。ですから当時としてはかなり遅い結婚だろうと。

佐伯)ですよね。

川島)まぁこれは秋山兄弟ともどもですけれどもね。

佐伯)あ、お兄さんも遅かったんですよね。そして、お相手の季子さんがおいくつ?

川島)そうですね、季子さんが21歳、この時は厳密には二十歳ですけど、その後誕生日が来て21歳になりますので、まあそのぐらいですね。

佐伯)まあまあ歳の差カップル。

川島)そうですね(笑)

佐伯)季子さんはどんな女性だったんでしょう?

川島)季子さんはですね、華族女学校を卒業されてますので…

佐伯)あ、華族のお嬢さんなんですね。

川島)そうです。

佐伯)華族って、あの華やかなという字の。

川島)はい。ですので、まぁ当時としてはかなりの女性の中でも割とそういう教養のあると言いましょうかね、文学とかそういったものにも認識のあるような、そんな女性だったんじゃないかなと思うんです。

佐伯)じゃあ歳が離れていても、そういう教養が高くて文章にも関心の高い女性というところで真之さんも…

川島)まぁどういうところに最後惹かれたかは本人に聞いてみないと(笑)というところがあるんですけれど、ただまあ真之さんのそういう…もともと文学少年だったとかっていうところを思うと、相通じるところがあるのかなという風に私個人としてはですね、思うところです。

佐伯)なるほど。先ほど実家のお父様だったり、お兄さんの好古さんだったりと、かなり影響を受けている真之さんという話がありましたけれども、今度自身が作った家族との生活ってのはどんな感じだったんでしょうか?

川島)季子とはですね、結婚して実はすぐにもう日露戦争が始まるんですね。明治36年に結婚しまして、その翌年の初旬からですね。ですから新婚生活っていうのは、そのなんか華やかなものではなくて、スタートしたと同時に状況が変わるんですね。で、真之自身はご存知のようにその当時海軍の中枢にいましたので、彼はですね、その一生の大道楽として昼夜を問わずに戦術研究に取り組んでいました。日本の運命を左右するバルチック艦隊との対戦に対してもですね、周囲が心配するほど考え込んでいたと言われています。で、どういう夫婦関係だったかって断片的に色々分かるんですけれども、ちょっとその具体的な様子が少し分かるものとして、連合艦隊が完全勝利し日本海海戦が終わった2週間後に書かれた手紙が残っているんです。今日そのコピーをお持ちしたんですけどね、明治38年6月12日に書かれた手紙です。

佐伯)この用紙の真ん中…原稿用紙がマスじゃなくて縦罫線で紙の真ん中に「海軍」って書いてある。

川島)そうですね、だからそういうまだ緊張が解けてないような状態。ま、海軍は勝利を収めてますけどね、まあそういう後に書いた手紙ということなんですが。

佐伯)達筆で書かれてますが…何て書かれてあるんでしょうか?

川島)一応その奥さんに対してですね、心境をまず書いてまして、戦術研究、対露作戦の立案という一生の道楽、彼は自分の仕事のことを道楽って言い方してるんですけど、道楽もこれで一通り尽くしたと。で、父母妻子ある数多くの人間を殺してしまった。これは戦争ですから致し方ないことですけれども、それを感じて真之は、これからは仏道=仏の道ですね、に入ってまあ農業などをする、そういう準備をするつもりだっていうことを語っています。

佐伯)国を守るためとはいえ、たくさんの命が失われた、その最前線にいたわけですから本当に傷ついたというところも多いにあったんですね。

川島)そうですね。ですから妻に対して、まだ新婚でそれほど長き日も経ってないですけど妻に対してはやはりその本音を言ってるっていうのは、この手紙からも伝わってくると思うんですね。

 

 


[ Playlist ]
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Michael Franks – When Blackbirds Fly
José Feliciano – Wild World
Seu Jorge – Rebel Rebel
Roos Jonker – New Dress

Selected By Haruhiko Ohno


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