今週は「坂の上の雲ミュージアム」からの生放送!2月24日から始まった第19回企画展テーマ展示「『坂の上の雲』にみる明治のインテリジェンス」について、学芸員の西松陽介さんにお話を伺いました。展示室に入ってすぐに目に飛び込むのは小説の第一巻に記された、ある一節。なかでも「たがいに国家的利己心のみでうごき世界史はいわゆる帝国主義のエネルギーでうごいている。」の部分が胸に刺さります。まさに国際情勢が複雑化し、ある種の危機感を世界が抱える今、明治の激動期を日本がどのように乗り越えてきたのかを知ることの意味を考えずにはいられません。今回は展示のテーマに沿って「外交の大戦略」「海軍の大戦略」「陸軍の大戦略」の3つのキーワードで企画展を掘り下げました。
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
佐伯)ここまで外交、そして海軍をテーマに伺いましたので、続いては陸軍についてお伺いします。「陸軍の大戦略」というコーナー、どのような内容でしょうか?
西松)はい。「陸軍の大戦略」では、この時期の陸軍の軍事行政・戦略計画の両分野で重要な役割を果たした児玉源太郎を中心に、大山巌や山県有朋、田村怡与造、そして小説の主人公の一人である秋山好古など、陸軍のそれぞれの部門を牽引した人物の行動に迫り、変化する国際情勢に陸軍がどう対応していったのかを紹介しています。
佐伯)陸軍も見どころたくさんということなんですが、まずは中央のタワー展示の部分についてご案内ください。
西松)中央のコーナーでは、児玉源太郎をキーパーソンとして取り上げ、日清戦後から日露戦争期にかけての陸軍の様子を、展示資料、展示パネル、投影している『坂の上の雲』のフレーズでご紹介しています。
佐伯)児玉源太郎、あのスペシャルドラマでは高橋英樹さんが演じられていました。私は高橋英樹さんにトークショーで、そのドラマ撮影の裏話などもいろいろ伺ったので、児玉源太郎にはちょっと思い入れもあるんですけれども。児玉源太郎という人物についても改めて教えてください。
西松)児玉源太郎は陸軍次官兼軍務局長として、日清戦争前から陸軍の体制強化に取り組んでおりまして、その後ですね、陸軍大臣を務めて、軍事・政治、そういったいろいろな部分で才能を発揮した人物です。日露戦争の直前には参謀本部次長の職に就任し、ロシアに対しての作戦の策定を担当しました。
佐伯)その児玉源太郎を含めて、展示パネルでは日露戦争直前の陸軍の各部門を牽引した人物というのが紹介されていましたよね。
西松)はい。元帥を務めていた山形有朋、陸軍大臣の寺内正毅、参謀総長で同じく元帥だった大山巌など、陸軍の各部門でリーダーシップを発揮した人物について肖像写真や組織図をもとに紹介しています。日本とロシアの関係が緊迫化していく中、万一の場合に備え、総力を挙げて準備する陸軍の状況を知っていただきたいと考えてます。
佐伯)先ほどの海軍のところでは薩摩藩、鹿児島出身の方が多いなという印象をお伝えしたんですが、翻ってこちらの陸軍の方を見ると、今度は長州、山口出身の人が多いんですかね。
西松)そうですね、やはり薩摩長州閥といいますか、陸軍は長州出身者が多くて、海軍は薩摩出身が多くてというのはですね、やはりこの時期までも残っていたといいますか、というのがパネルで人物を見ていただくとわかるかなと思います。
佐伯)で、その中央ではどのような資料が展示されているんでしょうか?
西松)児玉源太郎が陸軍大臣を務めていたときに、外務省から朝鮮半島の鎮海湾という朝鮮半島の南側と言いますか、に停泊していたロシア艦隊の情報を提供されたときの通知文であったり、あと児玉源太郎は先ほど申し上げたようにすごいいろんなマルチな才能がありましたので、その才能を見込まれて責任者として工事を担当しました九州-台湾間の海底電線布設工事の報告書を現在展示しています。これらの資料は防衛省の防衛研究所戦史研究センターさんからお借りしておりまして、4月下旬まで展示をしています。
佐伯)これがすごく面白いなと思いまして、あと意外だなと思ったんですよね。この明治期に海底電線を、しかもかなりの距離、布設していたっていうことなんですよね。
西松)この児玉源太郎が敷設した海底電線は約1800キロにもおよびました。児玉源太郎が手がけたこの通信網ですね、九州の大隅半島から台湾までずっと続けていくケーブルなんですけども、この通信網が日露戦争の際にも多くの情報を日本にももたらしています。展示室では、ケーブルの布設状況を説明した図示したものがあります。ぜひこちらもご覧いただきたいと思います。
佐伯)地図で本当に一目瞭然、この経路で海底ケーブルが敷設されたっていうのが、改めてその地図で見ると、こんな距離を明治期の人がケーブルを引いたんだ、しかも日本の自力でって…
西松)そうですね、海外の技術に頼らずですね、約2年間で。ですので、もう今から100年以上前に、そういった工事を成し遂げたっていうのはすごいことだなと思います。
佐伯)そうですよね。その当時の技術力にも驚きますし、その工事を責任を持って成し遂げたというのが児玉源太郎というのもビックリしました。
[ Playlist ]
細野晴臣 – Tutti Frutti
Prince – Reflection
Richard natto – Bish’s Hideaway
Jocelyn Brown – Daydreaming
Selected By Haruhiko Ohno


