今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、面河山岳博物館学芸員の安田昂平さん。現在「真・カブトムシ展」というカブトムシにスポットを当てた企画展が開催中。昆虫の中でも人気の高いカブトムシですが、その生態は未だに謎が多いんだとか。そんな中で、近年明らかになったばかりの生態をはじめ、最新の研究結果などについて教えていただきました。言われなければカブトムシとは気づかないような種類の標本を見せて頂いたり、実は愛媛県人が発見した珍しい種類が登場したり、意外な”真”のカブトムシの世界が!キーワードは「日本と世界のカブトムシ」「最新カブトムシ事情」「わたしたちとカブトムシ」の3つです。
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。


佐伯)バイオミメティクス(生物模倣技術)の分野で、何かカブトムシが注目されていることもあるんですか?

安田)残念ながらそのカブトムシのバイオミメティクス自体は、まだ実用化はされてはないんですけれども、実用化に向けて今いろいろと研究が進んでるっていう段階にはなってますね。

佐伯)何かこれが使えるんじゃないかなみたいな目星っていうか、注目してる箇所っていうのはあるんですか?

安田)そうですね。カブトムシの羽に最近注目が集まってます。

佐伯)はいはい、羽。

安田)カブトムシを飼育したことがある方なら何となくわかるかもしれないですけれども、羽を…夜になるとあの羽をパカッて開いてブーンて飛んでく。あの羽は実は勝手には開かないようになってるんですよ。

佐伯)どういうことですか???

安田)ちょっと何言ってるかわからないかもしれないですけれども(笑)

佐伯)え?

安田)実はあのカブトムシの羽の表面だったり裏側には、細かな毛がびっしり生えてるんですよ。その毛と毛が噛み合うことによって、勝手に羽が開いたりすることがないっていう構造になってますね。いわゆる…ちょっと違うところはあるんですけど、あのマジックテープをイメージしてもらえたら。

佐伯)あ~、はいはい。

安田)あんな感じで毛と毛がかみ合うことで、勝手に羽が開かないっていう。

佐伯)ふ~ん。

安田)で、飛ぶときは、カブトムシが胸にある筋肉ですね、筋肉を使って、その引っかかりを外すことによって羽をパカッて開くっていう構造になってまして。

佐伯)じゃ、その特性を今研究中、なんですね。すごい、なんかバイオミメティクス、これからどんなものが取り入れられていくのか楽しみですね。

安田)はい。

佐伯)あと他にはどんなことがわかってきているんですか?

安田)そうですね、カブトムシの、他にも最近わかったことでいきますと、実は昼間もカブトムシが動いてるっていう。

佐伯)なんでしょう、カブトムシって夜行性…

安田)そうですね、はい。

佐伯)ですよね。

安田)はい、図鑑でもよく「夜行性」っていうふうに説明がされてるとは思うんですけれども、必ずしも夜だけ動いてるわけじゃないっていうのが最近になって報告されてます。

佐伯)そうなんですか。これは何きっかけでわかったんですか?

安田)はい、これ実はですね、小学生の夏休みの自由研究なんですよ、元が。

佐伯)え、小学生が!?

安田)はい。

佐伯)発見したんですか、すごい!

安田)2019年と2020年の夏に、当時小学生だったの埼玉県の男の子なんですけど、彼が早朝から深夜まで自宅の庭にやってくるカブトムシの数を毎日ずっと数え続けてわかったっていうものですね。

佐伯)そうなんだ、そんなに毎晩やってきてたんですか、カブトムシが?

安田)はい。そうですね、彼の庭、その家の庭にシマトネリコっていう東南アジア原産の木が植えられてたんですけど、その木に集まってくるカブトムシにマジックで番号をつけて、それをひたすら数えるという。

佐伯)へ~!すごく地道な自由研究。

安田)なんでも160匹以上のカブトムシに印をつけて、それぞれがどれぐらいの時間その木にいたかっていうことまで調べてますね。

佐伯)すごいですね!小学生が…だってそれ、夜やったってことでしょ。

安田)そうですね、夜もやってますね。

佐伯)その結果、夜行性とばかりも言えないよってことがわかったんですか?

安田)そうですね、はい。夜のうちにそのカブトムシが、シマトネリコの木にやってくるんですけど、夜が明けてもそのままその木にとどまって、その樹液を食べたり、あと喧嘩をしたり、あとはもう繁殖交尾をしたりしてるっていうことがわかりました。

佐伯)その子が「こうです」って発表したんですか?

安田)そうですね、自由研究で最初それを発表したんですけど、それをカブトムシの専門家が目をつけまして、ちゃんとそれを共同で、いま山口大学の准教授をしているんですけれども、その先生と共同で、最終的には学術論文にまで。

佐伯)すごっ!そうなんですね。小学生ならではのこの地道な自由研究が世界に発表されるっていう…すごいですね。

安田)そうですね。

佐伯)なんか夢がある!

安田)私も驚きました、これは。

 


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Selected By Haruhiko Ohno


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