今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、開館30周年を迎えた西予市立美術館ギャラリーしろかわの館長・小田原誠さん。今年で28回目となる「全国かまぼこ板の絵展覧会」についてご紹介頂きました。全国各地から、さらには海外からも応募がある「かまぼこ板の絵展覧会」には、今年も6355作品が寄せられました。時代や世相を反映したもの、普段は口にできない家族への思いがこめられたもの、人生について考えさせられるものなど、様々なドラマが小さなかまぼこ板に詰まっています。「絵はいつでもだれでも描ける」「かまぼこ板の絵から生まれた物語」「この里に老いを定めて」の3つのキーワードで、展覧会の魅力と未来についてお話を伺いました。中には、東日本大震災にまつわる、こんな奇跡のエピソードが。


佐伯)2つ目のキーワードは「かまぼこ板の絵から生まれた物語」ということなんですが、本当にたくさんの物語がね、先ほど伺ったコラボ作品からも生まれてますし、それ以外でもたくさんあるんでしょうね。

小田原)ありますね。ご存知の方もあると思うんですが、東日本大震災に関連のあるエピソードをちょっと紹介させてもらうんですけれども、2011年の3月11日、あの大震災が起きる3時間前に投函された作品、それがですね、津波を、震災をくぐり抜けて3月19日にギャラリー城川に届いたんですよ。先般11月14日の愛媛新聞にですね、「復興みかん」の記事が紹介されましたのでご覧になられた方もあるんじゃないかなと思うんですが、その元になったエピソードということです。ご承知の通り、あの大きな津波による被害に遭わずにですね、こちらのギャラリーに届いたっていうことは本当に奇跡的だなと思います。千年に一度と言われる 未曾有の大災害の中をくぐり抜けたわけですからね。で、消印がですね、17日だったということもあって、応募した皆さんは無事かなとか、作品が届いたことも伝えたいっていうことで、その当時の館長さんが八方手を尽くされて色々と連絡を取り合ったんですけれども、その中で ようやくその担任の先生との連絡が取れて、「応募した子供たちは全員無事でしたよ」というところでですね、“感動賞”ということで、制作した岩手県宮古市の田老第三小学校、当時3年生だったんですが、その子供たち6人をなんとか表彰式に呼びたいっていうことで、当時の館長さんがですね、奮闘されまして、多くの皆さん方の支援を受けて表彰式に来てもらいました。

佐伯)すごい“絆”ですね。

小田原)で、その秋にはですね、収穫されたみかんをプレゼントしてみたんですけど、実はその子供たちが復興を祈願して、その種を植えたらしいんですよ。で、それが「芽が出て成長しました」ということで連絡があって、(当時の)浅野館長さんのとこに、その苗をですね、送ってもらったんですよね。その時に添えられたメッセージが「いつか実ったみかんを食べてみたい」っていうことがあったらしいんですね。で、その子供たちの夢を叶えるために、2015年から明浜町のみかん農家さんのところで育てていただいてまして。去年かな、「無事、実がなりました」と。

佐伯)すごいですね、これも!

小田原)作品が届いた奇跡、みかんの苗が成長して育った奇跡。遠い愛媛と岩手がですね、遠い土地同士で繋がった。本当、感動的なエピソードがこの作品についてまわってるって言うところですよね。

佐伯)そうですね。本当に小さなかまぼこ板の絵に込められた岩手の子供たちの思いっていうのが、思いがけない形で大きく実っていってるんだなっていう、まさに奇跡のエピソードですね。

小田原)そうですね。応募した子どもたちも現地でね、夢叶って頑張ってるようですしね。

佐伯)ぜひ今度はそれを食べに、本当に来てほしいですね、笑顔でね。

小田原)いつかそういう話になりたいっていうことでですね、今やってますよ。

佐伯)そうですか、楽しみです。

小田原)この作品は毎回展覧会で展示してますんで、是非見に来てもらったらと思います。

 

 


[ Playlist ]
Beck – Tropicalia
Rickie Lee Jones – Someone To Watch Over Me
Aztec Camera – Orchid Girl
Tracey Thorn – Like a Snowman

Selected By Haruhiko Ohno


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