今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、今治城学芸員の藤本誉博さん。今治城といえば、築城の名手・藤堂高虎の手掛けた城として知られていますが、じつは藤堂高虎が携わった城は改修を含めて20以上もあることを御存知でしょうか?さらに近年では、秀吉と家康を含め7人の主君に仕え、戦略家としても優れていた戦国大名として、再評価されているんです。今回は、そんな高虎の功績に改めて注目しました。


藤本)今治城も、新しく今治をもらって作るんですけれども、ここがどういうお城だったかと言うと、実はここも宇和島と一緒でかなり海を意識した海城なんです。宇和島城は、海の中にちょっと飛び出てたとこにあったちっちゃな山のところに築いたんですけど、今治の場合はですね、山はなくて砂浜の上に新たにお城を築いたと。

佐伯)でも砂浜の上って、“砂上の楼閣”なんて言葉もあるくらいですから、とても安定しないと言うか。

藤本)そうですね。

佐伯)イメージありますよね。そこに敢えて?

藤本)そうですね、おそらく当時の技術力の賜物だと思います。やはりどうしても安定するのはやっぱり地盤がしっかりした山の上、それは当時もそうなんですけれども、それをですね、おそらく克服できるぐらい、たぶん技術力が当時は上がってて、それを高虎はうまく使いこなせたんだと思うんですね。今治の場合は、より瀬戸内海に近いところにありまして、瀬戸内海のおそらく流通・交通を抑えるっていう意図があって、宇和島城を持ってたにも関わらず新しく今治城を作ったんですけど、新しく作るところに、近くに山がある所っていうのも当然あるんですけれども、高虎はいろんなその後のまちづくりとかというとこに使うスペースですよね、お城を作る時にこれぐらいスペースが欲しいとかっていう時に、もしかしたら合致しなかったのかもしれないですね。

佐伯)山手では。

藤本)はい。そしたら新しく平地に城を作ると。で、当時の技術でもおそらくできると、自分ではできるということで、今の今治城のような本当の平地の砂浜の上に城郭を築くということをしたんだと思いますね。

佐伯)先ほど、宇和島城を建てるときにもやっぱり海に近いところで経済に強いっていうところがまちづくりにも大事になってくると、そこもやはり踏まえてのことだったんですかね?

藤本)そうですね、海に接して、かつ今治城も城内に港を作ってるんですよね。

佐伯)城内にね。

藤本)もともと今治には大きな港があったということが最近わかってきてまして、そちらをどうも今治城の港に引き込んで作ってて、新しくその周りに城下町も作ってますね。おそらく経済・流通っていうのは、特に海を介しての経済・流通はすごく意識してたと思います。

佐伯)今治城のお濠には海の魚が泳いでいますっていうのが、県外から来られた方がちょっとビックリする一つかなと思うんですけど(笑)

藤本)そうですね、本当に海に接してますので。今の内堀ですね、お城の一番内側の濠が今残ってるんですけど、そこに海水が入ってきてるって言うのがいつの頃からかって言うのはちょっと分からないんですけれども、当時高虎が作ったころも、その内堀には限らず城内には海水が引き入れててですね、直接海から出入りできるところに港を作ってたんですね。

佐伯)他にも何か特徴ってありますか?

藤本)そうですね、砂の上に作ったというところで、すごく地盤を固めるために石垣のもとに犬走っていうですね、ちょっと平地を作って今石垣を立ち上げてるんですけれども、じつは砂の上に立ってる石垣としては日本で一番高いぐらいじゃないかな。

佐伯)へ~。

藤本)13 m か14 m ぐらいあるんじゃないかな、高いところで、たぶん。なかなかないんじゃないかなと思いますね。

佐伯)じゃあこの石垣も見どころのひとつですね。

藤本)見どころですね。あとはですね、残念ながら今建物自体が明治時代になってから全て壊されたので残ってないんですけれども、研究の評価では高虎っていうのはすごく今治城で…実はおそらく高虎がゼロから作った大規模な城っていうのが今治城がおそらく初めてなのではないかと。宇和島城の場合は実はその前にちょっとした砦のようなお城はどうもあったみたいなんですね、だからオリジナルというより改修という形なんですけど、今治城の場合はおそらくゼロから作ったお城で、高虎の築城の考えというのがすごく反映されてるというのが評価されてるんですけれども、当時の例えばですね、城門の形とか、その城門をどう並べるとか、あとはお城の形がですねすごくこう四角形な形なんです。今までの複雑な迷路のような形ではなくて四角形のシンプルな形。これからの世の中を治めるためにその方が使いやすいということなんですけど、そういう城門の配置とか四角形の形であるとか、あとは天守もなんかすごく当時最先端の層塔型天守であったっていうふうに考えられてるんですけど、こういういろんなものの最先端の当時の城の構造とか建て方を今治城で作ったっていうふうに評価されてますね。

   

 

 

 


[ Playlist ]
icole Willis & The Soul Investigators – I’ll Just Sit And Daydream
Rickie Lee Jones – Someone To Watch Over Me
Sinne Eeg – Talking To Myself

Selected By Haruhiko Ohno


この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く