今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、今治市玉川近代美術館学芸員の藤原敏子さん。現在、開館40周年記念として「東海道五拾三次 狂歌入り 東海道にみる旅のたのしみ」が開催されています。東海道五拾三次といっても、じつは56点あり、それが全てそろっている美術館というのは愛媛では玉川近代美術館だけ!全国でも珍しいそうです。所蔵されていても一堂に見られるのは貴重な機会とのこと。そこで「歌川広重と東海道五拾三次」をテーマに、「広重ブルー」「旅の醍醐味、食にお土産」「広重が描いた石鎚山」をキーワードに、作品の魅力を掘り下げていただきました!
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
佐伯)では、一つ目のキーワードです、「広重ブルー」。何かどこかで聞いたことあるようなワードだなと思ったんですが、これは?
藤原)はい、実はですね、2024年にNHKで歌川広重を描いたドラマのタイトルが「広重ぶるう」だったんですね。なので、もしかすると聞き馴染みのあるという方もいらっしゃるかもしれません。「広重ブルー」とは、広重が風景画で多用した透明感のある鮮やかな青色の通称なんですね。この青は実は国産のものではなくて、輸入された人工顔料の「ベロ藍」のことなんですけれども、1700年代初期、江戸時代なんですが、ドイツのベルリンの染色業者が赤色を作ろうとしていて、偶然に青色が発見されたんですね。
佐伯)え~、そうなんですか!?
藤原)そうなんです。で、江戸時代の後期に日本に輸入されまして、ベルリン藍とも呼ばれていたんですけれども、なまって「ベロ藍」と呼ばれておりました。
佐伯)は~。江戸時代にドイツで偶然生まれた青色が輸入されていたいうのも驚きなんですけれども、それで「広重ブルー」っていうのがドラマのタイトルになるぐらいですから、すごく広重の作品の中でも特徴的な色合いということになるんでしょうね。
藤原)そうなんです。あの浮世絵版画に革命をもたらしたと言っても過言ではないぐらい、本当に素晴らしい青色が入ってきました。
佐伯)そうですか。ちなみに輸入されてくるまではどんな青色が使われてたんですか?
藤原)そうですね、それまで浮世絵に用いられてきたのは、古来から日本にありました植物系のツユクサであったりとか、渋い青色の本藍ですね。そういった色では表現できない透明感のある鮮やかな青色が出せたのが「ベロ藍」だったんですね。
佐伯)へ~。
藤原)元来からある植物由来の染料っていうのは、色褪せがあったりですとか、定着させることが難しかったりしたんですけれども、明るい青を出す鉱物系の由来の顔料もあったんですが非常に希少で高価であったため、庶民向けの浮世絵には使いたくても使えなかったっていうところもありました。
佐伯)なるほど。
藤原)そんなときにですね、「ベロ藍」は安価で濃淡もつけやすくて、風景画の浮世絵版画にうってつけの素材だったんですね。
佐伯)安く手に入るものだったんですね。
藤原)安くかつ美しい発色の青色が出すことができました。それでですね、歌川広重や葛飾北斎の風景画に革命をもたらしました。
佐伯)いま名前の挙がった北斎、同時代に活躍した人物ですけれども、その北斎も「ベロ藍」を使っていた。
藤原)そうなんです。
佐伯)で、広重作品の青、ブルーとその北斎のブルーとは何か違いってありましたか?
藤原)そうですね、元々の使ってる顔料は「ベロ藍」で同じ素材なんですけれども、広重は特に空の移ろいや水面の反射など、情緒的で空気感のある描写にこの青を巧みに用いたことで知られています。後にですね、「広重ブルー」「北斎ブルー」が使われた浮世絵というのは、海を渡ってフランスに行きまして、フランスの印象派やアールヌーヴォーの芸術家たちにも鮮烈な印象を与えて、ヨーロッパのジャポニスム旋風の牽引役ともなりました。
佐伯)はい。あの青が一つの鍵となったわけですね。
藤原)そうなんです。特にですね、ゴッホは浮世絵に魅了されて広重の作品を模写もしておりますし、浮世絵の要素を自身の作品にも取り入れています。
佐伯)見たことがあります。ゴッホの作品の中に浮世絵が入り込んでるっていうような
藤原)そうなんです、背景にたくさん浮世絵展示してたりとかしますよね。
佐伯)ええ。そうですか、面白いですね、広重がヨーロッパドイツで生まれた絵の具を使いこなして、それが後にヨーロッパに逆輸入というかね、高く評価されたっていうことなんですね。
[ Playlist ]
Suss von Ahn – Alone Again, Naturally
Earl Sixteen – A Love That I Can Feel
Oasis – Songbird
Sharon Jones & The Dap-Kings – How Long Do I Have To Wait For You
Selected By Haruhiko Ohno



