今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、株式会社四国中央レポート代表取締役会長の藤原剛士さん。「司馬遼太郎 菜の花忌」をテーマに、お話を伺いました。司馬さんは野に咲く花、とりわけタンポポや菜の花といった黄色い花がお好きだったこと、また「菜の花の沖」という歴史長編小説を書かれたことから、その命日が「菜の花忌」と名付けられています。じつは藤原さんは、司馬さんが亡くなった翌月に大阪で開かれた「司馬遼太郎さんを送る会」に招待され、翌年から命日前後に開催されている「菜の花忌シンポジウム」を毎年取材、四国中央レポートで発信し続けています。今回のキーワードは「幻のドラマ もうひとつの『坂の上の雲』」、「司馬遼太郎史観」「なぜ県名と県庁所在地名が違う?」の3つ。司馬さんと藤原さんの意外な繋がりなど、とても興味深いエピソード満載です。

番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。


佐伯)では、一つ目のキーワードです。「幻のドラマ もうひとつの『坂の上の雲』」ということなんですが、これすごく気になりますね。どういうことでしょうか?

藤原)菜の花忌の開催はですね、司馬作品のゆかりのある県、例えば愛媛県や高知県、長崎県などで、有志による独自の菜の花忌が開催されるようになりました。例えば、愛媛は「坂の上の雲」、長崎は竜馬が結成した海援隊の誕生した場所ですので。高知はご存知のように「竜馬がゆく」ということでございます。特に松山の場合は、秋山兄弟、正岡子規のふるさと。愛媛県では平成9年に「えひめ菜の花忌シンポジウム」が、この南海放送で開催されました。

佐伯)実は、南海放送の50年史、社史にですね、「第一回えひめ菜の花忌シンポジウム」が開催されたということ、きっちり残っておりまして、この初回、第一回に藤原さんも出席されていたということなんですね。

藤原)そうです。特に二回目のときにコーディネーターの、文芸春秋社の編集時代の司馬さんと親交のあった作家・半藤さんが…

佐伯)半藤一利さん!

藤原)がコーディネーターで、パネリストに北条出身の脚本家であり小説家の早坂さんが出席されておったんですけども…

佐伯)早坂暁さんですね。

藤原)そう、暁さん。

佐伯)非常に豪華なメンバーですね。

藤原)そうです、そのとき早坂さんが「私の脚本で『坂の上の雲』をドラマ化したい」と、おっしゃいまして。

佐伯)早坂さんといえば、あの「夢千代日記」とか「花へんろ」とかね、大脚本家でいらっしゃいますけれども、早坂脚本の「坂の上の雲」ドラマを提案された!?

藤原)したんです。そうすると半藤さんは「とんでもない」と。「『坂の上の雲』は司馬家にとって門外不出の作品である」と。「絶対無理です」ということをおっしゃったんです。

佐伯)はい。

藤原)そうすると、南海放送の門田圭三相談役(当時)が最前列に座ってまして、突然立ち上がってこういうふうな提案をされたんですよね。「それでは皆さんどうでしょうか?秋山兄弟の生家と、好古の騎馬像を復元してはどうでしょうか?」と。そうしますと割れんばかりの拍手になりまして、結局それが復元活動が行われるようになって、全国から約1億円の募金が集まって、平成17年に、戦後60年の年ですよね、一般に公開されたと。

佐伯)あら!そのきっかけが第二回の菜の花忌…

藤原)第二回の早坂さんの発言と、半藤さんと門田相談役の、うまいことタイミングが合いまして。

佐伯)え~。でも、その中で実際に実現したのは秋山兄弟の生家の復元と、あと好古の騎馬像の復元。これは実現したけど、早坂さんが脚本を書く「坂の上の雲」のドラマっていうのは…だから「幻のドラマ」と!

藤原)それで私もずっと「これはもう生涯、私の目の黒いうちは駄目かな」と思ってたら、NHKさんが説得したんでしょうね。あの日露戦争を美化しないという前提のもとで、長編で…

佐伯)スペシャルドラマでね。

藤原)スペシャルドラマでやったじゃないですか。

佐伯)うわぁ、じゃあ…もしですよ、この提案から何か具体的な動きに繋がっていたら、南海放送制作の「坂の上の雲」が…

藤原)そう、あれがもしあのとき半藤さんが「そうですね」って言って賛成でもすれば、南海放送さんで、早坂さんの作品でね、「坂の上の雲」が映像化されとったかもわかりませんね。

佐伯)え~~~~、そうなんですね。

藤原)そうです、そうです。

 


[ Playlist ]
Roos Jonker – Man In The Middle
Athlete – El Salvador
Rickie Lee Jones – On The Street Where You Live
Norah Jones – Once I Had A Laugh
Sandra Cross With Alan Weekes – Moon River

Selected By Haruhiko Ohno


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