今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、「多喜浜 塩のまちづくり会議」事務局長で、新居浜市立多喜浜公民館館長の岡部修治さん。新居浜市といえば「ものづくりのまち」として知られ、海岸に立ち並ぶ工場群のイメージがありますが、昭和30年代まで瀬戸内最大級の塩田が広がっていたことをご存じでしょうか?今では地元でさえ知らない人が増えてきた中、その歴史と塩づくりに携わってきた人たちの文化を後世に伝えようと活動しているのが岡部さんたち「多喜浜 塩のまちづくり会議」。今回は「塩田の故郷 多喜浜」をテーマに、「世界に一つだけ、ソルティ多喜浜」「多喜浜塩田の恩人 多良尾介之進、深尾権太夫、天野喜四郎」「牧野富太郎とアッケシソウ」をテーマに、新居浜の知られざる歴史を紐解いていただきます。
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
佐伯)三恩人の関わった多喜浜塩田、どんなふうに開発されていったんでしょうか?
岡部)そうですね、まず歩みがですね、1700年ですね。元禄13年に浜士というお仕事、これ阿波国、今の徳島県ですね。阿波の浜士の六左衛門っていう方が、この多喜浜エリアの黒島という島にやってきました。で、そこの年寄りにですね、「この辺りは非常に塩田に適しているよ。塩田をしてみたらどうかな」と、このような助言を与えられました。
佐伯)え、浜士っていうのはどういう?
岡部)浜士っていうのは塩田関係の仕事をしていた方だそうです。
佐伯)あ~、徳島でご自身が塩田のことをやってた方が多喜浜エリアの隣か、黒島のところにやってきて…
岡部)はい、「多分ここは塩田がないぞ」と。「これは最高の所やけど早く塩田作りなさい」って。
佐伯)へ~。
岡部)そして年寄りたちが集まって、西条藩に申し出たわけですね、「ここで塩田をやりたい」と。こんな形です。それはどうしてかっていうと、瀬戸内海、この辺りは非常に遠浅になっておりまして、塩田を作るのに最適な場所であるということを本人たちもよくわかっておりましたので。そこで藩に出向き、藩に申し上げると、藩も「これは非常にいいことだ」と。当時、年貢はお米で徴収していたんですが、お塩の方はお米よりも利率が良かったと、このように聞いてございます。
佐伯)お塩も納めることができた。
岡部)そうですね、お塩も年貢として納めることができたと。それで信濃の国、今の長野県ですね、そこの深尾権太夫さんたち、お仲間に大阪の方たちも非常に何人かをおいでたみたいなんですが、彼らを迎え、塩田開発が始まったと。最初の仕事がやはり遠浅の遠くの方に堤防を築いて、一生懸命頑張っていただいたと。ところが非常に過酷なお仕事でございましたので、堤防完成後、数年後にですね、病死いたしまして、お亡くなりになられたと。そこで2、3年ほど塩田開発が中断されました。
佐伯)そうなんですか。
岡部)そのままではいけないと地元からも声が上がり、西条藩が塩作りの先進地・備後の国から天野喜四郎氏らを呼び寄せて、塩田開発をお願いしたわけですね。そしたら喜四郎さんが「深尾さんがほぼほぼ作ってくれてるから、すぐいい塩田ができるよ」っていうことで、数年後にはもうお塩はできていたと聞いてございます。子孫はこの「喜四郎」さんのお名前を名乗り、初代の遺志を継いで塩浜を開拓していったと。初代から6代まで、喜四郎さんが常に開拓の中心人物として活用され、古浜…これ浜の名前なんですけど、古浜、東浜、久貢浜、北浜、三喜浜などの五つの浜が築造され、総面積約240ヘクタール、大きな塩田地帯が160年余りの歳月を経て、幕末に完成されたと、このように記録に残ってございます。
佐伯)じゃ、天野、初代喜四郎さんから6代喜四郎さんまで
岡部)全て喜四郎さんでございます。
佐伯)天野家が関わって160年。それで、それだけのスケールに至ったということなんですね。
岡部)そうですね。背景といたしましては、「塩作りは米を作るよりも数十倍儲かる」と言われました。塩田開発とともに多くの人が集まった、ということがまず一つ。で、西条藩はその塩田のおかげで藩政も潤った。多喜浜界隈では大飢饉でも1人の餓死者も出すこともなく、一生懸命この塩作りで頑張っていったというふうに聞いてございます。
佐伯)先ほどね、前半でもお伺いした飢饉のときの救済事業にもなっていたと。
岡部)そうですね、天野喜四郎さんが塩田開発をしていた頃ですね、やはり飢餓の救済事業として、これも西条藩も力を注いだんですが、作業に従事した者に「お救い米」というふうにお米を配布したということもあったそうです。
佐伯)仕事を与えただけではなくて、それに関わったら、少しお米もいただけたという。
岡部)そうですね、西条藩もこの塩田のおかげで藩政が潤っておりましたので、多分ここは「お救い米」を出したんではないかと。
[ Playlist ]
Beck – Tropicalia
Phoenix – Summer Days
Everything But The Girl – Rollercoaster
Selected By Haruhiko Ohno




