キンキンに張った乳を、タコ松に含ませる。
ちゅうちゅう吸いだすと、きゅーっと腫れが引いていくのがわかる。
これがねー、これまで生きてきた中でいちばんというくらい気持ちいいのよ。
この快感を経験した女は全員思っているはず。
「どんな男もかなわないぜ」って。

タコ松のカビ…じゃない、髪

ふつう産婦人科の病院というのは、出産後、母親と赤ん坊は別々の部屋に入れられ、授乳時間になると、新生児室まで行っておっぱいをあげる、というシステムのところが多い。
わたしの通った病院は、病院と助産院がミックスしたようなところで、出産のときは医師がしっかり見てくれるけど、産後は助産師の指導のもと、赤ん坊と母親はできるかぎり一緒に過ごす、というスタイルをとっていました。

「赤ちゃんがおっぱい欲しがったら、たっぷりあげてくださいねー」と、手術の翌日、尿管もついたまま、腹を切った痛みと、麻酔のあとの頭痛でひーひー言っている状態で、助産師さんが赤ん坊をつれてきました。
「わたし、痛くってほとんど動けないんですけどー」と言おうとしたら、
「赤ちゃんはね、おかあさんのそばにいるほうが安心できるんですよ。そしてお母さんもね、赤ちゃんが泣くと、どんなに痛くても起き上がっておっぱいあげたくなるもんなんですよ。そうやって無理にでも体を動かしてるほうが、手術の直りも早いですから」と、助産師さん。
かくしてわたしは拷問のような痛みの中、赤ん坊の世話がスタートしたのでした。

たとえどんなに眠くても、おっぱい含ませてオムツ替えて世話をしなくちゃならない。
おかあちゃんの腹の中から取り出されたばかりの赤ん坊は、のべつまくなく泣く。わたしが痛みで気が遠くなりそうなときに限って、うんちをする。
しっかし、不思議なもんだね。
助産師さんの言うとおり、赤ん坊が泣き始めると、痛くても体は動く動く。あたた…といいながら、パジャマから乳を取り出す。くぉおーと叫びながら、うんちのついたおしりをふく。

おっぱいに必死にしがみつこうとするわが子を見てると、「こんないいかげんな母ちゃんでもいいのか…」と、じーんとくる。

わたしは昔から、手の焼ける男ばかり好きになって、しょっちゅう友人から「このドM!!」と馬鹿にされてきたが、もう、こいつでいい。こいつほど、Mの快感を与えてくれるものはほかにないだろう、と確信した。

出産翌日からの母子同室。助産師さんのサポートもあって、この上なく濃密な母子の時間を過ごすことができたわたしは、おかげで、おっぱいもどばどば出るようになりました。

東京出張に長時間ドライブに温泉旅行に動き回ったわたしですが、「お腹が張らなければ大丈夫ですよー」と、安心させてくれた梅岡ドクター。ゴキゲンなドラえもんのような笑顔でいつも和みました。