前回、医者になるには、国立大医学部に行くのが最安で350万円、と書いたら、25年前に国立大医学部を卒業した友人から「俺は、入学金10万円、年間の学費18万、6年合計118万ぽっきりで医者になったんや!」との伝言。
いまでは朝5時から予約の患者が長蛇の列をつくるという腕利きの整形外科医になっていますから、コスパいい息子だったのね。

さて、私が読んだのは、整形外科ではなく、美容整形のおハナシ。
衝撃作がエリカ様主演で映画化されるということで、テレビ・雑誌でも話題になっているこの漫画。
ヘルタースケルター 岡崎京子 祥伝社 1260円

全身美容整形で完璧な容姿・スタイルを手に入れたトップモデルが、手術の後遺症で、体も精神も壊れていく、という物語です。

デブな体、肉に埋もれていた目や鼻も、「皮をはぎ、脂をとかし肉をそぎ肉をつめ歯を抜きあばら骨を削る」ことによって、完璧な体につくりかえます。
しかし、それを維持するためには、定期的なメンテナンス(再手術)が必要。
再手術の苦痛に、軋むような日常の痛み、無理を重ねた体が、やがて崩壊していく恐怖。次第に精神も崩れていきます。

ネットでも、ちょっと検索すれば、人気タレントの整形疑惑などは山ほど出てきます。「プチ整形なんて、化粧と同じ感覚」と煽る週刊誌など、美容整形が身近なものとなっている昨今ですが、この漫画を読んでいて、20年前に韓国に取材に行った時のことを思い出しました。
通訳の女性に、「韓国の若い女性があこがれる生き方って?」と訊ねました。当時の日本は、女性の社会進出が進んできて、男性と同じようなキャリアを目指すという生き方がカッコイイとされた時代でした。
そういう答えを予想したら、「韓国の女性の幸せは、学歴でも仕事でもありません。結婚相手で決まります。いかに収入のある男性と結婚するか。そのために、女性は美しくなることに最も力を注ぎます。だから、韓国のかなりの女性は、美容整形をするのです。この道沿いの、あの看板もこの看板も、美容整形の医院。ソウルには、とてもたくさんの美容整形の場所があります」―。
美容整形というとなんだか後ろめたいイメージがあった当時は、ドン引きましたが、今なら、目的は変わっているかもしれませんが、いたってよく聞く話。

『デブ・ブスといじめられていた少女時代。ちょっと目を二重にしただけで、周りの男性の扱いが手のひらを返したように違ってきた。その魔法の虜になり、昼も夜も働き続け、シンデレラになるためのお金をためて、鼻に顎に胸に足に・・・。でも魔法は12時に切れる。
完璧な美容整形も、時間がたつと、老化など人間の自然な変化には対応しきれなくなる。多額の費用をつぎ込んで、再手術などの定期的なメンテナンスを続けなければ、シンデレラではいられない』
作品では、その費用が払えなくなり、崩壊してゆく自分の体に悲観して自殺する女性の姿も出てきます。

嫉妬や依存に欲望、誰もが持ってるけど、決して口には出せない黒い感情を余すことなく表現しているこの作品、ふしぎに共感できる部分が多くて、グロテスクなわりには読後感は悪くありません。

でも実際、美容整形後のメンテナンスって、こんなに大変なの?

←西条市の「歓喜庵」。黒瀬ダムが一望できる露天風呂に入りたくて、日帰りランチで行きました。ここそこに雪が残っています。

残念ながら、名物露天風呂は、去年の寒波のために配水管が壊れてしまい、使用停止中。大浴場に入りましたが、景色はまるで露天風呂。

←白いにごり湯が特徴で、湯船の底をかき混ぜると、ふわふわの湯の華!松山から1時間ほど。じゅうぶん旅行気分を味わえました。