親バカですが、うちのタコ松はよくわらいます。
朝起きてにっこり。お風呂に入れてもにっこり。おっぱいを見せるときゃっきゃっと笑う。わたしがあやす前に、ヤツのほうから笑いかけてくれます。
こちらが挨拶してもまったく返さない、あのおっさんに、タコ松のオムツでも贈呈したいくらいです。

ぜんぜん気がつきませんでした。
ちょっと体が熱いかなーと感じてはいても、この暑さで熱いんでしょ、くらいにしか思ってなかった。
帰宅してから、体を拭くために服を脱がすと、体じゅうに、あかいぽつぽつ。熱を計ると、38度を超えていた。
翌日病院へ行くと、風邪だと思うので様子を見て、とのこと。
次の日も、そのつぎも微熱がでたり下がったり。
でも、いつもどおりにっこりしてくれたから、大丈夫だと思ってた。

週末をまえに、念のため病院に行ってみた。
「頭がちょっと膨らんでるみたいなんですけどー」と医師に伝える。
赤ちゃんの頭蓋骨は、大人のように完全に閉じてなくて、てっぺんのあたりに穴があいている。ここがぷっくり膨らんでいたのが、2〜3日前から気になっていたのだ。
タコ松は、コケ程度にしか髪が生えていないので、頭のかたちがよくわかるのだ。

すぐに別室に連れて行かれた。
ぎゃーっという泣き声が20分ほどつづき、納まったと思ったら、「血管の状態が悪いので、血が取れませんでした。紹介状を書きますので総合病院に行ってください」―。

総合病院にあわてて駆け込む。
「この状態は大変です、髄膜炎の可能性があります」といわれ、血液検査と、背骨から髄液を抜く検査、頭のMRIなど、さまざまな検査をすることになった。
朝8時におっぱいを飲んだきりなので、軽い脱水症状になったのか、血液がどろどろになって、なかなか血が取れないらしい。
いろんなところに針が刺されるたびに、ぎゃーっと泣き叫ぶ。
これまで聞いたことがないほどの悲痛な声だ。
壁一枚で隔てた待合室にいるわたしは、なにもすることができず、ただ身を硬くして聞いているしかなかった。
2時間後、診察室からでてきたタコ松は、背中・手のひら・甲、足の先まで、うっ血と針の跡が痛々しく残っていた。
そしてそのまま入院。
朝、近所の小児科にちょっと出かけるつもりだったわたしは、つっかけとTシャツ+すっぴんのまま、おまけに財布には400円しかなく(子どもの医療費は無料なので、持ってきてなかった)、空腹のまま、病院のベッドでタコ松と一晩過ごしたのであった。

検査の結果、重症だと死に至るという髄膜炎の可能性は低く、タコ松の頭は、翌日には平らになった。
白衣を見ると、火がついたように泣き出す後遺症(?)は残ったが。

退院するタコ松を抱いて病院をあるいていると、3歳くらいの子どもがタコ松を見て、「ママー、このあかちゃん、髪がないよー。大きくなってもつるつるなん?」と大きな声で指差した。「こらっ!そんなこと言ったらいかんよ」と、母親が子どもをたしなめた。

タコ松は、いつもにこにこしていたから、病気になったことも気付かなかった。
でも禿頭だったから、深刻な病気をはやく知ることができた。

人生、なにが損で、なにがラッキーかわからんものだ、と思った。


検査疲れで爆睡中のタコ松。
泣き叫ぶ子どもの姿をみるのは、親にとって拷問です。