タダときいて、飛びつくか、警戒するか。

ゼロ円ビジネスの罠 門倉貴史 光文社新書 

「ゼロ円ビジネス」というのは、無料から利益を生み出すビジネスのことです。
古くは、街角で配っていたポケットティッシュや無料の電話帳、近年では、無料のクーポン誌だとかインターネットのミクシィなど。
ティッシュだったら、ウラに書かれたサラ金やフーゾクの広告、クーポン誌だと、掲載されている店の広告、インターネットのミクシィなども、サイト上にのせた企業の広告など、広告を出す企業からの広告料金で、無料のサービス(ティッシュや情報誌など)が提供されています。
でも、景気低迷が続く中、企業が出す広告宣伝費はどんどん削減され、広告費に頼るというこの手法も先細り気味。
次いで出てきたのが、本業の一部を無料にすることで、ほかの有料部分に誘導するという方法です。
よくあるのが化粧品の無料サンプルですが、最近だと、ケータイのゲーム。
無料無料とうたっているけど、そのゲーム提供会社の売り上げは、過去最高を更新するほどに伸びています。「商品は無料」なのに、「売り上げ」がでてくるのは、ゲームは無料でも、ゲーム内で使用する武器などのオプションを有料にして、この収益を得ているということです。

ちょっと話がそれますが、これも、一時は社会問題になりましたよね。
無料ゲームのはずなのに、子どもが夢中になってしまい、親の知らないうちに何万円ものケータイの使用請求が来てびっくりした、とか、ゲームに夢中になりすぎて、実社会とコンタクトできなくなる「ネトゲ廃人」の発生など、さまざまな問題がひきおこされました。
ゲームというのは、熱中しすぎると中毒症状を引き起こしてしまうんですよね。

わたしも実は、入社して3年目くらいのとき、ファミコンゲームにはまってしまい、「明日の朝から大事な仕事がある」ということがわかっていながらも、より高得点を目指して、もう一回、もう一回となるうちに、午前4時。案の定、翌日は、大切なパーティの司会があったのに寝坊です。髪もろくにとかさず、とりあえず手にした普段着のような姿で、パーティ会場に着いたのは、パーティが始まって30分後。
黒服の人が、慣れないアナウンスで司会をしているのを見て、切腹したいくらいの気持ちになったのを、いまでも強く覚えているので、以来、ゲームの類は一切していません。
しないと決めた、というよりも、ゲームを見た瞬間、フラッシュバックのように、あの脂汗を思い出すんですね。
だから、ダメですよ、中毒症状になるまではまるのは。

さて、話はそれてしまいましたが、コーヒーがタダとか、無料サンプルがもらえるとか、「無料」ときくと、人は飛びついてしまいます。
1000円のものを500円に値引きします、と言われるのと、500円のものをタダにします、といわれるのでは、ぜんぜんインパクトが違います。

じゃあ、「タダの商売」が、何でなりたつのか。
消費者心理からいうと、人には「返報性の心理」というものが働くのだそうです。
人の心には、貸し借りの帳簿があって、他人から何かをしてもらったら、それに対してお返しをしなければならない、という感情を持ちやすくなるということ。
つまり、ある店で無料のサービスを受けたら、何か借りを作ったような感覚にとらわれて、この借りに対するお返しをしたくなり、その店で有料かつ高額の買い物をしやすくなるということです。

スーパーの無料の試食販売などがそうですが、これを悪用したものには、高齢者を集めて、タダの日用品を配って得した気分にさせ、あげく、高額の布団や健康食品などを買わせる「催眠商法」なんかもありますね。
この心理は、国籍や人種にかかわらず、あらゆる人間が持っていますが、とくに義理堅い日本人はそれが強いそうです。

もひとつ、「保有効果」という消費者心理の働きがあるそうです。
たとえば、「一定期間は無料で、この商品をお試しいただけます」、というような無料キャンペーンなどがありますよね。タダだからいいや、無料期間が終われば返せばいい、と気軽に試してみたりしますが、客は案外一度手にしてしまうと、「せっかく受け取ったから手放したくない」という「保有」効果が働いて、キャンペーンが終わっても、そのまま購入という形につながりやすいんだそうです。

まあ、入り口は「タダ」とうたっていても、どこかでお金はちゃんと回収されている、ということですね。

わたしなどは、旧来型日本人ですから、スーパーの食品売り場で、つまようじにささったソーセージを持たされた日にゃ、商品を手に取らざるを得なくなってしまうタイプですが、「もう4本ちょうだい」と家族全員で食べながら、さっさと立ち去る人も、確実に増えている昨今、「タダに慣れた人たち」から、どうやってお金を得るのか、知恵比べが限りなく続くのでしょうね。

と、この本を読んでいたら、気がつけば深夜2時半。
けさ目覚めたのは7時15分で、普段より1時間以上の寝坊。超特急で、たこまつ弁当をつくり、幼稚園バスで送り出しました。
10分弁当だけど、日本のすばらしい冷凍技術のおかげで、普段と変わりないクオリティだと思う。
でも、そろそろたこ松は気づくだろうな、ママはぜんぜん料理してないって。

←日曜日、いっしょにカレーを作りました。ソーセージがじゃばらに、エリンギが輪切りになっていました。