30年近く前、わたしが新人女子アナだったころ、夏井さんが主宰する「吟行」に同行取材させていただいたことがあります。
参加者のほとんどはうら若き女性。酒蔵を見学する2時間で、10の俳句をどんどん作っていこうぜ!というもの。
「10」のノルマに、最初はムリムリ…と思ったけど、見たもの触れたもの、感じたことを、即座に言葉に置き換えていく作業が、知的ゲームのようでとても楽しかったことを覚えています。
当然、季語なんてほとんどわからなくて、むちゃくちゃな句の量産でしたが、「コレ、おもしろいじゃん!」とおおらかに笑ってくれる夏井さんの反応は、俳句って楽しい!という気持ちにさせてくれました。
今思うと、女子会のハシリみたいなことを夏井さんは仕掛けてたんだな。
おまけに、辛いこと情けないことも、大口で笑い飛ばす夏井さんは、いまバラエティでは欠かせない「陽気なおばちゃん」キャラのハシリだったようにも感じる…。
松山に生まれ育ったわたしですが、当時、俳句というと、「正岡子規」や「高浜虚子」など、いわゆる歴史の分野に近い文学で、教養あふれるおばさまが居住まいただして詠むもの、というイメージでした。
それを、「女子もすなるハイク」にまで引きおろしてくれた人が、夏井さんなんですよね。
そこらへんの女子がきゃーきゃー楽しみながら俳句を作るなんて、当時はさぞかし、仕掛けた夏井さんへの風当たりもきつかっただろうなと思う。
句会ライブというスタイルを生み出し子どもたちが俳句を楽しむきっかけをつくったり、俳句甲子園をしかけたり、種をまきつづけて30年。
いまや松山の子どもたちは、朝の縄跳び練習と同じくらいの感覚で俳句を作れるようになってるんじゃないかな。
TBSの「プレバト」をはじめ、全国知らない人はいないのでは?というくらい大人気の超辛口俳人、夏井さんの季語集が、いままた売れているそうです。
夏井いつきの美しき、季節と日本語 夏井いつき
手紙を書くとき、なんとも苦手なのが「寒気厳しき折から~」みたいな季節のご挨拶。
億劫だから、ついメールでささっと本題から入って誤魔化していますが、やっぱりメールでも、ちょっと気の利いた季節の言葉が入ると、「おっ」という印象になりますよね。
この本は、季語集ですが、俳句のためだけの季語の紹介にとどまらず、日常に気軽に取り入れられる季語の使用例も書かれているんですね。
たとえば初冬の季語、「凩(こがらし)」
使用例として、
『窓から見える冬木立に凩が吹いています。がんばれ凩。がんばれ枯葉。どっちも負けるな。』
ほっこりしますよね。
こんな形で、日常のメールに取り入れることができたら、「デキル女」って尊敬のまなざし間違いナシ。
二十四の季節それぞれにチョイスした季語と説明、日常使用例が、鮮やかな挿絵とともにたっぷり載っています。
道を歩いていてふと感じた心地よさ、風のにおいだったり、陽射しの温かさだったり、それもすべてに「ことば」がある、という日本語の凄さも感じます。
家から会社まで、家からご近所のスーパーまで、毎日歩いている風景にも、あちこちに季節が散らばっていて、この本といっしょだと、とてもリーズナブルに日常生活を楽むことができそうです。
いまや全国的人気であちこちとびまわっている夏井さんに、この本の楽しみ方やいまの日常、そして俳句を「わたしたち」側に引き寄せてくれた30年の苦労なども聞きました。
ニュースな時間 12月13日(火)・14日(水)・15日(木)の17:20頃から。
本のプレゼントもありますので、ぜひお聴きくださいね。