「うちの部長は上のいいなり。現場の苦労をぜんぜんわかってくれない。あいつは上の犬だ!」
「バブル景気に沸いていたころのやり方で、“できるはずだろ!”と言ってくる上。時代が違うから通用しないでしょ、って誰も反論しないのよね、うちの男性社員って」
どこの居酒屋でもよく耳に聞こえてくるサラリーマンたちの愚痴。
そりゃそうでしょ。
中間管理職の仕事は“トップの意向を、文句言わさず下に遂行させること。”
トップに反論しようものなら、直ちに別の部長に自分の首を挿げ替えられるだけだしね…。
と、耳元でささやきたくなる、50歳以上定年待ちのサラリーマンも多いのでは。
組織の掟 佐藤優
「組織には法律とは別の掟がある。この掟をマスターすることが組織の中で生き残るコツである。」―。
日本最恐の組織、外務省の裏も表も知り尽くしている男、佐藤優氏は、こう語ります。
氏によると、外務省の掟は2つ。
第1条、 上司は絶対に正しい。部下は上司に絶対に服従すべし。
第2条、 上司が間違えている場合も、部下は上司に絶対に服従すべし
つまり、『組織は必ず上司に味方する』ものであるから、上司と対立するとけっしていいことにはならない。
そして、どんな組織であっても、『重苦して、汚く、面倒な仕事は下に降りてくる』という「物理の法則」が作用している、のだそう。
外務省のノンキャリとして、冷戦時代の名残が残るロシアの大使館に配属され、キャリアがやらない汚れ仕事(国会議員の夜の接待、犯罪まがいの蓄財工作、トイレ掃除まで)さえもこなし、その有能な仕事ぶりから、キャリア並みのポジションにつくが、政府の思惑から、犯罪者にしたてられ、組織から抹殺された、という経歴の佐藤氏。
CIAやかつてのKGBのような諜報機関をもっていない日本の外務省は、外国の機密情報をどのように手に入れているのか、また外交官の特権とはどんなものなのか、どうやって蓄財するのか、不都合な人間をどのように組織から間引いていくかなど、日露交渉の裏表を知り尽くした佐藤氏だから書ける内容もあって、じつにおもしろい。
最恐の組織と、じぶんの会社と比べても、“恐度”が違うだけで、たいがいは同じだということもよくわかる。
あきらめるしかないよ、サラリーマンたち(わたしも含め)。