新聞広告でも、本屋さんでも、大々的に宣伝されていましたね。
身近な地名と商品名に、手を伸ばさずにはいられなかったこの本。
【キリンビール高知支店の奇跡】 田村潤
日本一のダメ支店に左遷された新任支店長(著者)が、やる気のない社員の尻をたたき、試行錯誤の末、強力ライバル会社を抜いてトップシェアを獲得、副社長までのぼりつめた、という、シンプルなサクセスストーリーです。
支店長が取り組んだのは、
・やる気のない社員のモチベーションをあげるために密な対話をするようにした
・シェアが極端に低い地元の温浴施設で客にヒアリングをしたり、量販店の動向をみて、ライバルになぜ負けているのか原因分析をした
・「高知人は〝いちばん″が好き」という県民性を生かした広告展開をした
・多くの料飲店をまわり(1日10軒)、営業マンのマメさを店主に印象付けた
などなど、まさに、経営戦略のお手本のような事例が詰まっています。
そして当時、味覚を変更して評判が悪かったラガービールが、高知支店の女子社員の社長への直訴で、もとの味に戻るようになり、これを逆手にとって「高知の人の声で、ラガーの味が元に戻りました!」と、高知人のプライドをくすぐるような広報戦略でさらに業績を上げることができたという話も。
まあこれなんて、結果が良かったから美談で語れるエピソードだけど、サラリーマン社会、もし本社での会議だったら…男性社員だったら…とうぜん打ちクビor島流しモノだったに違いない、と思う。
そして2001年に、強力ライバルとのシェアが逆転。ついに高知でのトップとなりました。
顧客の声を聴き、問題を見つけて一つ一つクリアしていく、顧客とのまめなコミュニケーションと、支店長から新人まで、社員がチームワークで汗をかいた結果の勝利。
まさに、絵にかいたようなサクセスストーリーで、頑張ればかならず結果はついてくるんだと、朝ドラを見た後のような爽快感に浸ることができました。
・・・と思いながら、
〝アサヒ キリン 高知″と、ネットでググっていると、「不買運動」という文字が躍り出てきたぞ?
アサヒ・キリンのシェアが逆転した2001年に、実は、アサヒに不買運動がおこっていたそう。深層海洋水での新商品を作ろうとしていたアサヒに対し、高知県も全面的な協力をしていたが、結局アサヒは富山の深層水で商品を作ることになり、義理を重んじる高知の人が、へそをまげたらしい―というもの。
真偽は不明だが、そんなウラ事情があったのか。。。
にしても、モノが売れない時代に、現状打破の糸口になるヒントがたくさん詰まっているし、配役がすぐに浮かんでくるくらいドラマ化が似合いそうな本でした。