わたしたちマスコミ業界にいると、わかりやすく伝えるため、「ざっくり言うと」的な表現を使いがちです。
たとえば、「日本のモノづくりが衰退しているといわれますが…」とか「日本の電機産業は中国や台湾メーカーに凌駕されてしまった…」とか。
この本は、そんな「ざっくり表現」がいかに失礼であったかと、超反省する情報に満ちています。
『みんなが知らない超優良企業』 田宮寛之
ついついわたしたちは、自分や身近な人がかかわっていない限り、テレビや新聞・雑誌で見かけることのない企業については、名前すら知ることはありません。
たとえば素材や機械の部品、製品を作るための機械などをつくる企業は、そうそうテレビやラジオにCMも打たないのでなおさらです。
和菓子製造機器の専門メーカーの『マスダック』。
全自動どら焼き機は、国内で圧倒的シェアを持っているだけでなく、〝東京ばな奈″の製造も請け負っています。お菓子を製造する機械を作るにとどまらず、実際にお菓子も作っているので、開発の課題も見つけやすい。
どら焼き機を、海外の見本市に出展したところ、大好評で、いまでは海外シェアは100%。どらやきが海外で?と思いますが、あんこのかわりにチョコクリームを入れた「サンドイッチパンケーキマシン」が人気だそうです。
また意外なモノが、意外な企業によって、意外なビジネスをしているというケースも。
たとえば、少子化で日本では先細りと言われた産業、学習塾も、その教育システムは海外で高く評価されていて、公文やベネッセなど、いま経済発展で教育熱が高まっているアジアで急成長しているそうだし、
人口増加や経済発展で、世界的に水不足が深刻になっているなか、海水を淡水化する装置を作る企業以外にも、高水準なレベルの日本の地方自治体の上下水道インフラをもつ、北九州市や東京都などは、海外での水道インフラの設計やコンサルタント事業を積極的に展開しているんだそう。
また血圧計、電動歯ブラシなどのイメージが強いオムロン。実はそういったヘルスケア部門は、総売り上げのうち1割程度で、主力の一つは、なんと鉄道の自動改札機だそう。
そして、高度経済成長期の日本を支えた鉄鋼、コストの安い新興国に生産の主役が奪われていった、というのはよく知られていますが、日本の鉄鋼の品質は高く、新興国のメーカーが日本製の鉄鋼の成分を分析しても、同じ品質の製品を作ることができないんだそうです。
混ぜ方や、温度設定など、微妙なノウハウは、「匠の世界」並でもあり、炭素繊維など素材分野については、新興国は追随できないくらいのものらしい。
日本の誇る企業が250紹介されています。
この先日本はどうなるんだ…と嘆いているのはマスコミだけ?
マジメで実直な日本人はコツコツと前進しています。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という懐かしい流行語を思い出す本でした。