知らないおじさんから声をかけられたら、無視して走れ。
知らない人に道を尋ねられたら、「大人の人に聞いてください」と言って去れ。
わたしたちが子どもの頃に教えられた道徳とは真逆なことを、子どもに言い聞かせなくてはならない現代。
100人のうち99人はいい人だとしても、子どもの親切心を逆手に取り、毒牙にかける糞野郎が1人いれば、そいつから身を守る方法を教えなければならない。

ウソをつかず、真っ正直に、実直に努力すれば、必ずいいことがある―。
そうやってずっと教えられてきたけど、そういうウソを子どもに信じ込ませていた、とんでもない時代だったともいえるんじゃないかなあ。



こども孫子の兵法 
齋藤孝

さて、孫子の兵法というと、なんといっても『兵は詭道なり』。
つまり、「戦うってことは騙し合いなんだよ。できるのにできないふりをする。必要なのにいらないと見せかける。近づいているくせに、遠くにいるように見せかけて、おいしい話で誘いこみ、混乱させて崩す。相手が強ければ戦わず、下手に出て油断させる。ライバルと親しい人たちを分裂させて、不意をつくんだよ!」というのが、大前提にある。

この孫子の「騙し合い」を、子どもにはどう伝えるのか。

著者による〝こども訳″では、
『正々堂々はとてもたいせつ。でもときにはかけひきも必要だよ。』
サッカーやバレーの戦術の一つのフェイントを例にあげて、ルールの範囲でどう知恵を絞るかが大切、と説いている。

ウソをつかず、真っ正直だとしても、
面と向かって正論を吐くと、空気が読めないといわれ仲間外れになったり、うざいとボコられたりする。
「ウサギとカメ」のカメのように、実直に努力していても、
情報をあつめて最短距離を見つけたり、ちゃかり友達の自動車に同乗させてもらったウサギが勝ったりする。

ものごとにはホンネと建前があるんだよ、ということを子どものうちからじんわり教えておくことは大事なんしょうね。
仮に、騙された!ってことになっても、やたら傷ついたりカッカしたり怖気づいたり卑下したりせず、「ひとまずアタマを冷やしてから、つぎの作戦にうつろうぜ」と、頭脳戦の方法を指南してくれる本です。
大人にもおすすめ!