スティーブンジョブズ氏や孫正義氏など、世界的に活躍するリーダーは中国古典を熟読していることはよく知られていますが、
中国古典の第一人者、守屋洋氏が、これまで研究してきた「孫子」「孟子」「老子」「荘子」「韓非子」「論語」「貞観政要」などのエッセンスが1冊でわかる、とてもとてもお得な本です。

ビジネスに効く教養としての中国古典  守屋洋

守屋氏の解説は、「現代の戦場=ビジネスの場」という視点で捉えているので、社会人にとってはとても身近に感じます。

「孫子」といえば、代名詞といえるくらい有名なのが『戦わずして勝つ』。
守屋氏は、勝つために最も大切なのは「情報」であり、自分や相手、戦いの場を知り尽くすことが最も大事だとしています。
その情報を得るために、カネは惜しんではいけないよ、と説いています。
2500年前から、戦いは情報戦だ、と判っている中国。
日本はもちろん、アメリカだって振り回されっぱなしです。

わたし自身、社会人人生の中でも、いちばん動ける40代くらいまでは、孫子の兵法がバイブルのように感じていました。
しかし、戦いのステージから降りる50代ともなると、「老子」が沁みてきますね。
老子は、戦いの世の中で、どうすればうまく生き延びられるか、に主眼が置かれています。

『上善水の如し』
お酒の銘柄ではありません。老子を代表する有名な言葉です。

「理想の生き方とは、水のようなものである。万物に恩恵を与えながら、相手に逆らわず、人の嫌がる低いところへと流れていく」―。
つまり、水のように柔軟で謙虚な生き方をするのが理想、と守屋氏は説いています。

激しい戦いの中でも、老兵は、柔軟に謙虚にしていれば生き延びられる、ということでしょうか。

しかし年寄りは、それだけじゃ終わらない。
老子はこんな言葉も残しています。

『まさにこれを弱めんと欲すれば、必ずしばらくこれを強くす。まさにこれを去らんと欲すれば必ずしばらくこれに与す。まさにこれを奪わんと欲すれば、必ずしばらくこれを与う。』

つまり、相手を弱めたいのなら、まず強くしてやる。追い出そうとするならば、まず味方に引き入れる。奪おうとするなら、まず与えてやる、という戦術です。

ひょうひょうとしているようで、したたかに奪い取る。
老兵をないがしろにすると、嵌められるので気をつけなきゃね、若いリーダーさん。

ほかにも「部下や従業員は、罰則で締め付けて言うことをきかせろ」的な、性悪説に基づいた韓非子など、中国古典の有名どころが1冊で早わかり。
ちょっと知的風を吹かせたいときにも役立ちそうな一冊です。