「孫子の兵法」、ちょっとしたブームになり、マンガから子供向けまでさまざまなバージョンが登場していますが、小泉純一郎元首相の首席秘書官、いまの安倍内閣では参与をつとめる飯島氏が、自らの兵法(経験)を紹介しています。
魑魅魍魎が跋扈し、権謀術数が渦巻く政治の世界で、どのように権力を操っていったのか、興味津々。

ヒト・モノ・カネを自在に操る 孫子の兵法   飯島勲

どの本にもよく紹介されているエピソードとして、
『呉王が孫子の実力を試すために、後宮の美女180人の軍事訓令を命じる。孫子は、美女を2組に分け、呉王が最も愛する寵姫2人をそれぞれのリーダーとした。しかし、孫子がいくら指示を出しても、ふざけて従わない。そこで孫子は「従わないのはリーダーの責任である」として、リーダー役の寵姫2人を、美女たちの前で殺してしまう。それから、美女たちは懸命に訓練に取り組むことになった』
というものがあります。

これに絡めた飯島氏のエピソードとして、当選回数の浅かった当時の小泉氏の軍師だったころ、だらけた選挙事務所に緊張感を持たせるために、飯島氏はある方法を取ったそう。
事務所みんなの前で、信頼関係があり気心の知れたスタッフを叱り、そのメガネを思いっきり横からはねのけた。メガネはばーんと嫌な音がして事務所の真ん中に転がり落ち、事務所にいた全員は凍りついた。そしてその時、この仕事がいかに大切か、優しく説いた…。

まあ、見せしめで脅しあげる、という方法ですね。

見せしめというと、わたしがアナウンス室の管理職だったころ、道路交通法の改正で、自転車の傘さし運転や並走が検挙対象になったとき、かなり口を酸っぱくして部員に徹底するように言ってたなあ。
もしアナウンサーが傘さし運転をやっていたりしたら、「南海放送の〇〇アナ、改正道路交通法違反で初の検挙!」なんて、格好の見せしめ対象になるでしょ。とうぜん同業者にとっては格好のネタになって大々的に報じられるし、そうなると警察にとっては、法改正のアナウンス効果抜群ですから。(※あくまで私の推論ですが)

 

そんなこんなも思い出しつつ、政界の裏側を知り尽くした飯島氏の、「公にしても問題ナイ程度」の手の内が楽しめます。

例えば戦う前の態勢づくりとして、「握手」にも細心の注意を払ったエピソード。
小泉元首相の北朝鮮訪問の際の、首脳会談の握手場面。北朝鮮としてはそのシーンで親密さを演出し、日本が北朝鮮に従順であるというイメージで、後々までその映像を利用しようとする。もし抱きつかれでもしたら…。
そんなことをさせないために編み出したのが、握手の瞬間に相手の親指以外の4本の指を強く握る、というテクニック。これなら、相手は自由に動けないそう。
笑顔を見せず、4本指を握りしめる方法は、パーティーなどの席でも、著名人と写真をとって自分の利益のために利用しようという悪質なケースから逃れることにも応用しているそうです。

 

そんななか、ちょっと気になる部分がありました。

飯島氏がひそかに描いている野望、について。
「シベリア鉄道を北海道まで延伸させる」―。

日本の製品をヨーロッパに輸出する場合、現在は、船便で最低22日かかりますが、EU鉄道とつながるシベリア鉄道を北海道まで延伸させれば、4日で輸送が可能となり、世界の物流に大きな革命をもたらすとか。
「日本の技術力なら可能なはず。残された人生の中で何とか成し遂げたい」と、強い思いを記していました。

おりしも昨日、プーチン大統領来日で、北方四島に動きがあるのではないか、というニュースが取りざたされていましたが、この政界のフィクサー、なにか企んでいるかも。