新入社員の研修の季節です。

先日、新入社員の研修で「コミュニケーションの取り方」というコマを持たせてもらいました。
われわれのおシゴトは、「コミュニケーション力」がかなり必要とされます。
仕事相手はほとんど初対面。
取材にしてもインタビューにしても、限られた時間の中で、ポイントとなる話を引き出さなければなりません。

正しく言えば、「話を引き出す」のではなく、いかに「話していただく」か。

いいインタビュアーとは、自分の言葉を極力少なくして、相手が話す分量を最大にできる人のことをいいます。

ときどき、記者会見などでも、質問のはずなのに、自分の意見をとうとうと述べて、引き出せた答えが「いいえ」だったりする記者がいたりして、ずっこけそうになる時もあります。

どうすれば、「話したくなる」のか。
一言でいえば、「あなたになら話したくなる」ような人になれ、なんですが、難しいものです。

さて、「これからの正義の話をしよう」や「白熱教室」で一躍ブームとなった、ハーバード大学・サンデル教授の、「聞く」技術をテーマにした本
サンデル教授の対話術 マイケル・サンデル/小林正弥 NHK出版

授業というと、「教えたり」「説教したり」一方的に話すもの、というのが普通ですが、サンデル教授は、大人数を対象にした授業で「対話型」講義を実践しています。
絶妙な問いかけで、学生に自分の考えを述べさせます。
教授は、「学生のことば」を引き出す役に徹します。
「話す」という過程で、問題の焦点を明らかにして、新たな気づきを得たり、考えを深めさせるという方法です。

サンデル教授ブームは、同時に、「人間にとっての正義」や「公共」ついて考える機会を増やしました。
去年あたりから、バラエティ番組でも、「公共」とか「正義」とか「善」について考えるものが出てきましたよね。
不思議なことに、時を同じくして、「タイガーマスク現象」などが起ったりして、「助け合う」ことの暖かさを実感したりもしました。

わたしたちが、「みんなのしあわせ」について、真正面から向き合うための助走だったような気がしてなりません。