結婚相手を値踏みするように(いやらしい?)、

シューカツをしている人、株式投資をしようと考えている人などは、「ココ、どうなんだ?」と様々な角度から企業を見ていますよね。

その企業の商品だったり、CMだったり、社会活動や従業員の給料、社長の発言、従業員の態度や売上だったり…。

 

【会計士は見た!】 前川修満

 

この本は、「会社の成績表」ともいえる決算書から、企業の姿を浮き彫りにしています。

たとえばソニー。

ここのところ業績が持ち直してきたというニュースがあり、日本が誇るエレクトロニクスもようやく復権したのね…と思っていたけど、決算書から見えてくるのは、「ソニーはもはや、エレクトロニクス企業ではない」ということ。

ソニーが持ち直したのは、金融事業(生命保険・損害保険、証券など)が日本のトップレベルにまでのびているからであって、かつてのウォークマンのようなエレクトロニクス事業は赤字のまま。優秀な子会社によって、本体のソニーブランド辛うじて守られているのです。

 

四国から撤退してしまった、家電量販店のコジマ。

かつては業界最大手だったコジマが凋落した理由を、コジマ・ヤマダ・ケーズデンキの決算書から読み解いています。

良し悪しは別にして、コジマの正社員率の高さに比べ(パート従業員率は、コジマ38%、ケーズデンキ90%)、従業員一人あたりの売り上げの低さ(コジマが7370万円に対して、ケーズデンキは1億5160万円 ※2009年度)をあげています。

ケーズデンキ躍進の理由として、顧客囲い込みのポイント制をとっていないこと、売上ノルマも課さず、あえて地代の高い一等地には店を出さない、という「頑張らない経営」が功を奏しているのではないか、と分析しています。

 

そして、

シューカツ中の学生なら、一度は耳にしたことがあると思いますが、日本一給与が高いと言われている会社、キーエンス。配電・制御機器メーカーで、工場の自動化ラインに必要な自動化・省力化のセンサーを扱っています。

本書によると、従業員の平均年収が1648万円! ※2014年

ちなみに三菱商事は1375万円、日本テレビ1469万。

一般的に総合商社やテレビ局(地方局以外!!)は国内でも屈指の高年収ですが、それよりも群を抜いている。

キーエンスの決算書をみると、売上原価率(売上原価÷売上高)が20%、つまり2割が原価、8割が粗利益です。利益率は業種によって違いますが、同業種では6割強が原価ですから、とびぬけての利益率です。

キーエンスは、メーカーでありながら、工場を持たないファブレス企業です。何を売っているかというと、モノではなく「問題解決のアイデア」だと。

生産性の向上につながるアイデアを、顧客である工場に提供。それに伴い新設備を導入する場合、特注品ではなく、汎用品の組み合わせでの提供ですから、原価は押さえられますね。

ちなみに、上記の高年収企業の従業員の平均年齢と平均勤続年数は、三菱商事・日本テレビよりもかなり若いし、勤続年数も短い。

ネットで「キーエンス」を検索すると、「年収」というキーワード以外に「激務」という言葉が出てきたりします。「労働時間は1分単位で管理される」「業績が悪いと、1分単位の行動を細かく分析される」などのカキコミもあり、〝能力も高く若くてバリバリ働けるうちはいいんだろうけど、そんなに長くは気力が持たない″といったところでしょうか。

企業のイメージというのは、商品やCMや雰囲気からも抱けるけど、数字から見る企業の姿も、なかなかおもしろい。