年明け早々、我が家にある唯一のテレビが壊れてしまった。

剥げかけた【世界の亀山モデル】というシールが貼ってある。

9年前に、「液晶ではシャープがダントツですから…」と電器店の店員に勧められて買ったものだ。

 

 シャープ崩壊 日本経済新聞社

 

台湾の企業「鴻海」に買収され、いまや外資系企業になってしまったシャープ。

日本を代表する一流メーカーの転落ストーリーを読みながら、

ハマグリと鳥が争っている間に、2者とも漁師に持っていかれてしまった…という故事が浮かんだ。

シャープ転落の大きな原因のひとつは、ハマグリと鳥の争い、つまり権力者の人事抗争である。

会長・社長・副社長のトップ3がそれぞれ勝手に経営に口を挟み、5年ほど前から、会社はキンググドラ(三頭)状態となっていた。当然、社員は誰の方針に従っていいかわからず迷走。日本最高水準の技術者が多数いるにも関わらず、トップのごたごたは、急速に名門企業の力を削いでしまうのだと驚いた。

もちろん転落の原因はそれだけではないが、印象に残ったものが加えて3つ。

まず、

ソニーや松下電器(パナソニック)に比べ、ブランド力が低かった時代、液晶技術で勝負に出て、ようやく手に入れた「液晶のシャープ」というブランド。やがて液晶テレビの市場は飽和しつつあったのだが、拡大路線のまま巨大工場を作りつづけ、赤字を急速に拡大させたこと。

2つ目に、

シャープ堺工場で製造した液晶パネルは、同業のソニーや東芝にも供給していたが、需要が急速に伸びて生産が追い付かなかった時期、シャープは自社製テレビへの供給を優先し、他社への供給を制限した・・・そんなこともあり、世界で液晶パネルの需要が減り堺工場が苦境に落ちたとき、東芝もソニーからもそっぽを向かれてしまったこと。

3つ目。

下請け企業に対し、執拗に値下げを迫り、横柄な態度で接するシャープの悪評があったという。取引先を「おまえ」呼ばわりし、怒鳴り散らすのは当たり前で、地元では、シャープに対する同情論はほとんどないという。

司令塔が役割を果たせていないこと、成功体験に執着してしまうこと、義理を欠くこと、礼節をわきまえないこと・・・「それって、あたりまえにダメでしょ」的なことをしているのに、巨大企業になると、自分の姿が見えなくなるんでしょうか。

30年ほど前だったか、台湾や韓国など「NICs(ニックス)」と呼ばれた地域が、日本のトップブランドをまねて作った電気製品が大量に国内に出回った記憶がある。見た目は日本製品に激似だけど、値段は半分以下。当時2~3万円したウォークマンもどきが、数千円で手に入った。貧乏学生だった私はすぐに飛びついたが、1~2回使うと壊れた。「NICs製品は、安物買いの銭失い。やっぱ日本製でないと…」と、日本の技術をあらためて見直した記憶がある。NICs製品はじきに市場から消えたが、20年後、急速に進化して、日本の電器製品を凌駕するだけでなく、企業さえも傘下に収めてしまった。

 

結局、半年たった今も、我が家の「亀山モデル」を捨てられずにいる。

で、壊れたテレビの前に置いて使っているのは、ハイセンス(中国企業)の格安製品だったりする。

ハイセンスの前に置くべき、「ネクスト亀山くん」の出現をひたすら待つことにしようか。