ラインから外れてしまったサラリーマンの定年退職をテーマにした小説「終わった人」の、

もの寂しーい読後感を引きずったままのある日、新聞2面下広告で見つけ、

思わず販売サイトからポチっとしてしまった本。

  左遷論 楠木新

 

サイトを見てみると、ベストセラー1位と書いてある。

やっぱりね。

今は、どの会社も、春の人事異動が出終わったころ。

「理不尽な異動をさせられた!」と感じている人が、世の中にごまんと出てくるシーズンなんだろう。

この時期にこのタイトルは、どんぴしゃなビジネスチャンス。

 

著者によると、企業側から見ると「左遷人事」なんてことはありえない。

個々の社員が自分で勝手に左遷だと思い込むから「左遷」という概念が出てくるのだと。

そりゃ会社が辞令を出すとき、「キミは〇〇部に左遷です」なんて言うわきゃない。

「新天地でぜひ実力を発揮してくれ」が定石。でも、社外の人にはわからなくても、

社員にとっては、その部署が会社の重要な仕事を担っていないとか、下層ランクだ、

なんてことははっきりわかっている。

だから、下層ランクと思う部署への異動辞令に対し、「オレがなぜ左遷されるんだ!」となる。

もっとも、著者の前作【人事部は見ている】にも書いているが、

「たいがいの人は、自分のことを3割ほど高く評価しているもの」だそう。

その人の自己評価の高さと、周囲からの客観的評価との落差もあいまって、

「オレほど仕事のできる人間がなぜ左遷…」になっていくわけね。

 

左遷というと、有名どころは菅原道真だけど、あの池上彰さんも、

NHKでの左遷人事が転機だったというくだりはとても興味深かったし、

終盤には、左遷を機に人生の価値観を変え、いきいきと活躍する人たちの事例も

いくつか登場してくる。

 

自分の不遇の理由を見つけようとしてこの本を手にした人たち、

きっと、「いまは辛くても、この人たちのように、いいこともあるに違いない」と、

気持ちを奮いたたせて、明日からの変わらない日常に戻っていくんだろうな。

 

がんばろ、サラリーマン!