最近、子どものころのウナギの思い出が、よく蘇る。

わたしの父は、人はよかったが、病弱なのに飲んだくれで、飲むと大盤振る舞いした。
よく入院もした。
退院してちょっと元気になったと思うと、すぐに夜の街に飲みに行っては、へろへろになって帰ってきた。
飲んだくれると、気が大きくなるのか、ふだんわたしたちが絶対口にできないような、ウナギ弁当や、にぎり寿司などを、ツケで、土産に持って帰ってきた。
わたしたち兄弟は、深夜、いいにおいのする包みを見てわくわくした。
しかしなぜか、「こんなん食べていいんやろか」と、言いようのない不安を感じながら、とろけそうなウナギを口にした。

不安は的中した。

「こんなん買ってきて、来月の生活どーするんよ!」母の怒り狂った声が響く。
当然、翌日からは、食卓に並ぶおかずの数も減った。
小遣いも減らされた。

さいきん、定額給付金が、あのウナギに思えてしようがない。

ただでさえ生活が苦しいのに、酔っぱらった父が大盤振る舞いをしてしまう。
一瞬は、確かに美味い。
でも、その先には、厳しい生活が待っているのだ。

緊急の景気対策は確かに必要でしょう。
しかし、ただでさえ借金だらけの国なんですよ!
ウナギ代をツケにして、タコ松に払わせるのか?

2兆円あるんだったら、もっともっと使い道があるはず。
産婦人科医不足で妊婦さんが死んでしまうような現状なんですよ!
それは問題だ、何とかしなくては…と言っている間に、何とかできるでしょ。
定額給付の実施を、こんなにすんなりと進めてしまえるだけの力があるんだから。

わたしは、ウナギを食べるなら、みんなが自分の財布でウナギを食べるくらいの余裕ができたときに、楽しく食べたいです。