松山に、三島由紀夫研究で第一人者と言われる方がいらっしゃる、その方がこのたび新しい作品を上梓された…ということで紹介していただきました。
三島由紀夫が愛した美女たち 岡山典弘
三島由紀夫というと、ザ・ナルシストというイメージだったので、正直、断片的にしか作品に触れることはありませんでした。
しかし、ナルシスト=自分を一番愛している、という三島由紀夫は、いったいどんな女性を愛したのだろうと、興味津々。
この本の前半は、若尾文子や三輪明弘、越路吹雪といった芸能界の大御所との愛情、後半は作品のモデルになった女性たちとの恋愛に焦点にあてています。
「愛した女性」とあるので、若尾文子や三輪明弘と恋愛関係にあったのか、と想像していましたが、その“才能や作品”を愛した、と表現するほうがあてはまる気がします。
後半の、作品のモデルとなった女性たちとは、三島との絡みつくような情事も掘り起こされています。
それらの女性たちと、どのように恋の駆け引きがなされたのか、女性たちの心の動き、会話まで、克明に表現されています。
まるで登場人物に直接インタビューしたような内容ですが、
実はこれらは、過去の文献やインタビュー記事、自伝など、三島や女性たちに関する膨大な資料を集め、その中から、二人の関係を浮かび上がらせていくという手法がとられています。
その資料は数千にも上るとか。
著者の推察で描いている部分はごくわずかです。
たとえば、三島と越路吹雪とは結婚まで噂されましたが、実現しなかった。その理由として、三島は三代に渡り高級官僚の堅実な家系であり、大スターで浪費家であった越路との結婚を躊躇させたのではないかと推察していて、その根拠となる三島の祖父の家系までも研究した上での推論なので、非常に説得力があります。
2~3の資料から、著者の想像力を働かせて10の全体像を作り上げていくのとは、根拠のレベルが違うわけです。
資料のみで、これほどリアルに生きざまを浮かび上がらせる手法は、わたし自身、かつて目にしたことはありません。
「三島由紀夫の動くデータベース」とも言われる岡山氏は、高校時代に三島作品に衝撃を受け、没頭するようになったそうです。
そのまま研究者になりたかったそうですが、「趣味と職業は別にしたほうがいい」との親の勧めで、堅実な道を選びます。
松山南校、松山商科大学を卒業し、愛媛県庁に入庁。そして、この春定年退職し、現在は伊予銀行に籍を置いて140年史の編纂をする傍ら、松山大学の文学の講師をつとめ、三島由紀夫の研究者として全国的な活動をしています。
この本は5冊目であり、岡山氏の三島研究は知る人ぞ知る存在だったとか。
その筋では第一人者として知られていても、勤務先はあの県庁。県職員が現職以外でマスコミに顔をさらすことはまかりならんとの事で、ひっそりと地道に研究を続けていたそうな。
そして晴れて県庁を退職したこともあり、今は、三島研究者として堂々とメディアに出ているんだそう。
機会があり、先日岡山氏にインタビューをすることができました。
この本を読んで、どうしても聞いてみたかったことが2つ。
●三島が自害したのは、時代に取り残されていくのが悔しくて、最後に「自分を見てよ!」という“かまってちゃん”的感情だったからなのか
●「沈める滝」のモデルとなった貞子との恋愛。19のうら若き女性を、29の女たらし三島が、弄んだ末に3年で捨たという、ひどい男としか思えないが、晩年の貞子は、「いちども嫌な気持ちにさせられたことのないいい男だった」と回想しているが、なぜか
ということ。
暴言かとは思いつつも、ぶっちゃけて尋ねてみました。
さて岡山氏はどのように応えたのでしょう。
きょうから「ニュースな時間」のなかで、3日間にわたって放送します。17時20分ごろから。
お楽しみに。