「お金はあるところにはあるんよねー」という話はよく聞きますが、

〝ある″ところを見たことがないので、深く考えることもありませんでしたが、

あるところには〝ある″。但し、周到に隠されている、というのがよくわかった本です。

 

プライベートバンカー  清武英利

プライベートバンクとは、富裕層の資産を管理するための銀行であり、お金持ちたちのためだけに働くバンカーは、「カネの傭兵」と言われています。

ちなみに富裕層とは、金融資産(土地や家以外の現金・有価証券など)が1億円以上、超富裕層とは5億円以上持つ人たちのことを指し、プライベートバンカーは、そんな人たちしか相手にしません。

わたしなどには、一生かまっていただけることのない人たちです。

 

お金持ちたちは、なるべく税金を払いたくない。そこでオフショア(課税優遇地)とよばれるシンガポールにどんどん資産を移しているんだそう。

まあ、税金逃れという点では、パナマ文書のタックスヘイブン(租税回避地)と同じだと思いますが、当人たちは、オフショアはクリーンだと言い張っているようで。

この本は、シンガポールに集まっている日本人のお金持ちたちのお金をめぐる、バンカーたちの攻防が描かれています。

シンガポールには、お金だけでなく、移住者も集まってきます。IT企業家や投資家、パチンコ屋や不動産業者、有名企業の元会長・役員など。

なぜなら、日本の税法には「5年ルール」という抜け道があって、遺産相続をする親と子が、ともに5年以上日本国外に居住していれば、海外にある資産は、課税されなくてすむんだそうです。

 

その課税逃れのために、シンガポールで5年間の我慢を過ごしているお金持ちも多いといいます。

5年くらい遊んで気楽に過ごせばいいじゃん、とわたしたちなど一般労働者は思いますが、一代で財を成したようなバイタリティあふれるお金持ちにとっては、課税逃れのため、ただひたすら暇をつぶすというのは、酷なことでしかないそうです。

 

先日も、室井佑月さんと話題になったのですが、タックスヘイブンに流れているお金は、個人資産だけで2500兆円といわれています。(日本やアメリカの国家予算が200~300兆円)

2500兆円あれば、いま世界が抱えている貧困とか、地球温暖とか、大概のことが解決できる金額のはず。

 

本書には、いま、国税局では国外居住を5年から10年以上にしようという動きもある、と書いていました。

税金を逃れるためだけに、10年も、逃亡生活のような時間を過ごすことがいいのか。

それとも、税金をきっちり払って、「キレイな事業家だったね」と言われる方が、いいのか。

 

目の前に、大金をみたことがないので、わたしにはわかんないけど。