北海道の置き去り問題、

テレビだけでなく、PTAやママ友、職場や居酒屋でも、「しつけか虐待か」で、それぞれの持論を展開しているのではないでしょうか。

では、消費税の問題については?と問われると、途端に口数が少なくなる…。

教育問題に関しては、みんな教育を受けた経験があるわけで、一億総評論家になれてしまうけど、財政や消費税問題については、科学的データをある程度知ってないと「ただの愚痴か?」としてしか扱われない。

 

【「学力」の経済学】 中室牧子

 

著者は、教育経済学者です。

たとえば、閣僚にしても、教育政策に関しては、まったくの専門外である大臣が「私の経験上…」と話し出すことは多くありますが、経済政策において「私の経験上…」と話すことはまずない。日本では教育政策に科学的根拠が必要だという考えがほとんどないことを指摘しています。

 

たしかに、巨額をつぎ込んだ子ども手当や少人数学級において、どれほどの教育効果があったのか、数字で見ることはほとんどありません。

税金を投入する以上は、それが効果があったのかどうか、ダメだったのなら次どうすればいいのか、経済政策や農業政策のように、データで検証して次の手を打つ必要がありますよね。(少なくとも民間企業は、結果に対してもっとシビアです)

 

日本では根性や愛情がメインとなる教育論ですが、海外では、

「どういう教育が成功する子どもを育てるのか」ということを、科学的根拠に基づいて明らかにしていて、その検証結果がこの本の中にいくつか紹介されています。

 

たとえば、親にとっては意見が2分するテーマ、

「いい成績とったらゲーム買ってあげる」など、子どもをご褒美でつっていいのかどうか。

 

・・・いいそうです。

 

では、

「テストでいい点をとったらご褒美」と「本を読んだらご褒美」、どちらがいいか。

 

そりゃ、結果に対してご褒美を与えるのが鉄則でしょ、と組織人なら考えます。

しかし、アメリカでの実験データは、後者のほうが成績が上がったという結果が出ています。

“アウトプット(結果成績)よりも、インプット(学習)でご褒美をあげるほうが効果的”としています。

つまり、アウトプットの場合、「だれでも成績はあげたいと思う、でも勉強の方法がわからない…」というところでつまづいてしまうのに対し、

インプットは、「本を読んで宿題をすればいい」などと、何をすべきか明確にしていることで、結果的に成績があがる、というしくみだそう。

 

なるほど。

 

そして

子どもは褒めて育てるべきかどうかについても触れています。

これも、「能力が高いのね」ともともとの能力をほめるのではなく、具体的に達成した内容をあげることが重要、としていいます。

これについて著者は、

「“やればできる”などといって、むやみやたらに子どもをほめると、実力を伴わないナルシストを育てることになりかねない」と指摘しています。

 

ゆとり世代に頭を抱える先輩たち、膝を打つのでは。

 

ほかにも

・成績別に教室を分けて授業を進めるのは効果的

・しつけを受けた人は年収が高い

・少人数学級は費用対効果は低い

・テレビやゲームをやめさせても学習時間はほとんど変わらない

 

など、これまであいまいな感想で論じられていた教育問題について、データをもとにすぱっと分析しています。

 

個人的体験に基づくアツい教育論も、それはそれで楽しめますが、科学的根拠からみた教育は、

「居酒屋での教育論」にずいぶんハクをつけてくれそうです。