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取材21日目 無人の島ブラザーズアイランド

水曜日, 7月 21st, 2010

ブラザーズアイランド、キャンプサイトからから見える夕景

7月21日

取材も残すところわずかです。

朝、パチリと目が覚め・・・。
と言いたいところなのですが、
どんよりと目が覚めました。

というのも、憂鬱な雨。

南東アラスカは、アマゾンよりも雨量が多いと言われているらしく、
雨は、当たり前なのですが、
テント暮らしの今、雨はイタイ。

昨夜から、ポツリ、ポツリとテントに落ちてくる雨音に
「やられたー」という思い。

昨日ほどは寒くはないのですが、極度の湿り気を感じます。

「とにかく起きよう」
と思い、頑張って寝袋から出て、着るものを着て、カメラ2台に機材を抱えると、
食料テントまで行きます。

大きなタープの下で、雨は完全にしのいでいるのですが、
体の芯から冷えてる感じで、とにかく寒い。

そして、驚いたのは、空気中を小さな雨粒が霧のように舞っているのです。
ですから、タープの下に置いているものはすべて濡れてる。

持ってきたカメラにも、いつの間にか水滴が付きます。
急いで、ビニール袋に入れます。

日本の雨のように、雨をしのげば濡れない。
のではなく、雨をしのいでも、濡れるのです。

これは確かに森が苔生すのが頷けます。

海岸からの風景は、ねずみ色にどんよりとして、見通しも悪く、気持ちまでどんよりしてきます。
森の中は、さらに暗く、寒々しさを助長しています。

20分後、松本さんも起きてきて、さっそく朝食です。

もちろん、豆雑炊。

それでも豆雑炊を食べると体が少し暖まりました。

ところで、豆雑炊の水は、キャンプ横に流れる小川の水を使っています。
砂浜に近く、水があるというキャンプには絶好の場所なのです。

原生の森をつたい流れる清らかな水は・・・。

と言いたいところなのですが、実は、見た目は、コーヒー色。
ちょっと薄めですから、アメリカンと言ったところ。

ちょっと見ると、どぶ川のようにも見えます。
と言うか、十分見えます。

と言っても、汚いわけではなく。
これは、森のタンニンが含まれているためにこんな色をしているんだそうです。

でも、ちょっと、飲む気はしません。

また口をついて「「寒い」と言ってしまいます。

松本さんが、いつも水筒として使っている容器にお湯を入れてくれました。
この透明の水を入れる容器。
この容器、すごく優れものです。
アラスカでキャンプをする人たちの必需品で、
ほとんどの人が持っています。

松本さんが、「実は、この容器にお湯を入れて湯たんぽにする人もいるんです」
というので、実際に確かめてみる事に・・・。

テントに戻り、寝袋の足元に入れてみると、これが劇的に暖かい!

これまでは、自分の体からあっためるしかない状態だったので、
その暖かさは、驚くほど・・・。

ここで、実は、僕の体調が・・・。

ycyeyy0324.JPG

残念ですが、撮影を2日繰り上げて終了する事に。
たいしたことはないのですが、大事をとって帰る事に。

スコットさんに連絡。
スコットさんのボートは、小型のモーターボートで、なんと2時間で島までこれるのです。

迎えが来るまでにテントや機材をパッキング。
そして、森の撮影を。

森の撮影は、もっときちんとしたかったのですが、残念です。

夕方、スコットさんが奥さんと船で迎えに来てくれます。

松本さんともここでお別れです。

急な展開で、松本さんと別れを惜しんでいる暇もなく、
松本さんが小さくなるまで手を振ります。

寂しさがどっと押し寄せます。

松本さんと言う、真っすぐな人物に出会った人は、皆、松本さんに頑張ってほしいと心から思います。
僕も、そんな風に感じました。

松本さんは、自分の為に、自分がやり遂げたい事を一生懸命悔いのない形でやっているだけだ。と言います。
しかし、これは難しい事です。

僕らのような人間は、そこに計算があったり、人に迎合したりする。
そこには、裏と表があって、真実が見えない。

松本さんは、直球を投げ続けるから、誰もが、松本さんを信じて疑う事がありません。

アラスカで、アラスカの人や自然と共に共生している松本さんの姿は、
日本の社会にどっぷりとつかった自分たちに、何かを確かに教えてくれると思います。

少なくとも、僕自身はそうでした。

そして、自分の人生をどう生きるか。
自分の人生に悔いは残らないか。
を強く考えさせられました。

それは、松本さんだけではなく、アンカレッジでお世話になった大山さん夫妻や、
それぞれの場所で心からのサポートをして頂き、その事を当たり前のようにして下さった多くのアラスカの人々。
全員から感じ、考えさせられました。

僕は、松本さんの生き方に、植村直己さん、そして、星野道夫さんが重なって見えました。
自分がしたいから冒険をする。しかし資金が必要で、その事で「何のため」と言う世間の問いに悩んだ植村さん。
カリブーの大群の中にすっぽりと囲まれた時、写真をとらず観念し、心のシャッターを押した星野さん。
いい写真を撮影することが目的ではなく、その過程が人生において最も大切だと断言する松本さん。
彼らには、共通して、目的に向かうひたむきさがある。と感じました。

僕は、彼らのような純粋なひたむきさを持つ事はできませんが、
そこから、自分にできる何かを学びとり、
自分なりでいいから何かに向かって努力することが、
大切だと感じました。

松本さんは言います。
「松本さんはすごい」
ではなく
「松本さんも頑張ってるから、自分も自分なりに頑張ってみます」
と言ってくれる事が
なによりもうれしい・・・と。

アラスカは、変化球ではなく、直球であれば、ものの見事にキャッチしてくれ、
暖かく見守ってくれる場所であり、
そうでないものに対しては、あくまで厳しい、と感じました。

暖かさ、と、厳しさが同居する国。

そして、

ああ、やっぱり、寒かった・・・。

軟弱なディレクター伊東でした。