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取材3日目 アイチリックにて

土曜日, 7月 3rd, 2010

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7月3日

朝9時に目がぱっちり。

とにかく寝ました。

爆睡していました。

こんな寒い原野で、しかもテントでこんなに眠れるなんて。

松本さん「伊東さん、よく寝てましたねー。すごいですねー」
伊東は、頭ぽりぽり「いやいや、それほどでも・・・」
松本さん「昨日ね、朝1時過ぎにこの辺り一面が霧に包まれて、幻想的だったんですよー。
      伊東さんを起こそうと思ったんですけど、寝てたんで、やめました」

ぐぐぐぐぐ、残念、無念。
そんな、チャンスを・・・。
悔しいーー。

とは思うのですが、松本さんが起こしに来たら、多分、機嫌悪そうに、
寝ぼけながら「えー、なんなんですかー?あー眠た」みたいな事言ってたんでしょうね。

それにしても、残念。
リベンジは、今晩、果たすぞ!

さて、今朝も、豆雑炊。
3回目となると少々飽きてきますが、それでも、そんなに悪くないですよ。

北極圏にやってきて2日目、周りを飛ぶ蚊が気になり始めます。

北極圏の蚊は、有名らしく、夏になるとものすごい数の蚊が発生するんだそうです。
でも、大発生する時期は、もう少し後のはず。

プーーン、とか言う生易しい音ではありません。

ウワーーーーーーーーーーん!
みたいな、ジェット音なんです。

カメラを構えている僕は、蚊のいい餌食。
両手がふさがっているので、刺されても、なされるがまま。

実は、北に行くほど蚊が多いんだそうです。
南東アラスカには、蚊はあまりいないんだそうです。

意外です。

しかし、松本さん手抜かりはありません。
ちゃーんと蚊よけのスプレーを用意。
さらに、ネットを用意。

蚊よけのスプレーは、ちょっとしたスプレーなんかではびくともしないので、
米軍仕様の、強力なやつを使います。

体には相当、悪いらしい。

それでも数時間すると効き目が落ちてきます。

蚊は、服の上からもガンガン刺してきます。
容赦ありません。

それから、蚊は、黒が好きらしく、黒い服を着ている僕は、
どうぞ、群がってください。と言っているようなもの。
無数の蚊が頭から足まで群がっています。

松本さんによると、裸で蚊に刺されるままだと、30分くらいで死に至るんだそうです。
北極圏の蚊は、半端じゃありません。

それから、頭からかぶる蚊よけのネットは、効果絶大。
蚊帳の周りを飛び回る蚊をみると、
「ざまあみろ。させるもんなら刺してみろ。フフフ」
と言う感じなのですが、
いざ、撮影のだんになると、
ファインダーが見えない。
撮影はもちろんできません。

結局は、ネットをかぶれないのです。
そして、蚊の餌食になってしまうのです。

そして、蚊と言えば、大問題が・・・。
それは、トイレ。

トイレに行こうものなら、「どうぞ、お尻の血を吸ってください」と言わんばかりの状態です。

そこで、私は考えました。
どういう時に蚊は少ないのか。

それについては、松本さんが教えてくれました。
蚊は、強い風だと飛べない。

そうです。
風が強く、寒い時。
それは、夜中。3時とか4時とか。
その一瞬を狙うしかないのです。

トイレには本当に苦労しました。

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さて、北極圏3日目。

昨日と同じ、狼の巣を目指して、松本さんカメラをバッグに出かけます。

川沿いに登って行きます。

川に残った氷河の上を歩いている時、何とグリズリーを発見。

絶好のシャッターチャンスです!

野生の熊は、人間を見つけると一目散に逃げていきます。

脅かさないように、ジワリジワリと熊との間を詰めていきます。

熊は気づいていますが、逃げません。
僕らは、近くまでいき、撮影。
うまくいきました。

しかし、これ以上近づいては危険です。

さて、そろそろ帰ろうと思いますが、熊がいるのは、僕らのテントがある方向、つまり帰り道。

テントに帰るには、どうしても熊を追い越さなければなりません。

じわじわと熊を追い越そうとしたsの時、

その熊が、僕らに近づいてきたのです。

ぞっとしました。

しかし、好奇心のようです。

威嚇するようなそぶりはまったくありません。

しかし、最悪を考え、松本さんと僕は、河原に避難。
身構えました。

僕らは、ベアースプレーと言う、熊撃退スプレーを持っています。
消火器の小型のような形で、中には強烈な唐辛子のエキスが入っています。
レバーを引くと液体が約10メートル飛ぶため、熊を引きつけて撃退することになります。

僕らは、ベアスプレーの安全ピンを抜き、身構えました。
でも、とにかく熊を怒らせたり、ビックリさせてはいけないので、熊に背を向けて、
ちらりちらりと熊の様子を確認します。

「熊よ、気を変えて向こうにいってくれ、頼む」
と心の中で祈ります。

しかし、

グリズリーは、ゆっくりと僕らのいる河原に降りてきたのです。

思わず、息を飲みます。

どんどん近づいてきます。

僕らに向かってきてるのか。

それとも

偶然なのか・・・。

僕らは、じわじわと反対側に移動し、岸から上がります。

しかし、ここから熊と僕らの攻防が始まるのです。

松本さんと僕は、しばらく、留まり、熊がどちらに行くのか様子を見ていましたが、
熊は、ゆっくり、ゆっくりと移動を始めます。

僕らは、熊と距離をおきながら、テント方向に向かって移動を始めます。

熊が見えなくなると、ホッと胸をなでおろしますが、

次の瞬間、また、熊の姿が見える・・・の繰り返し。

熊は、どうも僕らの向かっている方向に移動しているようです。

そして、熊が、河原に降りたところを見計らって、
大きく山側を回り込んでテントに向かいます。

先述しましたが、とにかく、歩きにくさ100パーセントの原野で、
しかも、重い機材を持っていますので、
本当に息が切れそうです。

でも、恐怖の方が先立って。

移動しながらも、もし、熊が来た場合、逃げる場所はないか、とあたりを探しましたが、
本当に、木が一本も生えていない原野です。
まったく、逃げ場所は、ありません。
ベアースプレーで対応するしか他に道はありません。
うまく、ベアースプレーが効いてくれて、熊が逃げていく事を祈るしかないのです。

僕らは、何十回も後ろ、左右を見ながら、何とかテントまで辿り着きます。

テントまで戻ると、なんとなくホッとします。
家に帰ったような気分です。

ところが。

ほっとしたのもつかの間、

熊が、現れたのです。

かなりの至近距離です。

松本さんと僕は、急いでテントの周りに設置した熊よけの電線ガードの中に避難します。

熊は、松本さんと僕のテントに並行して、ゆっくりと歩きながら、
なんと、僕のテントに近づいて行ったのです。

そして、僕のテントの周りに設置している、熊よけの電線ガードをかじった瞬間、電気が流れ、
熊は、少し驚いたい様子で、ゆっくりとテントから離れていったのです。

そして、今度は、食堂テントの方に向かいます。

しかし、熊は、学習したのか、食堂テントに触れることなく、
ゆっくりと、本当にゆっくりと、行ったり来たりしながらも遠ざかって行ったのです。

遠ざかっていったといっても、いつ帰ってくるか、それは、熊の気持ち次第です。

本当にドキドキの数時間でした。

この熊の行動は、危険だと松本さんは、キャンプを早めに切り上げることにしました。

もちろん、熊は、危害を加えるようなものではなく、好奇心で近づいてきたものでしたが、
通常、野生の熊は、人間を見ると、どんなに遠く離れていても、逃げてしまいます。

アラスカで毎年のように起こる熊の被害は、多くが人間の食べ物の味を知った熊なんだそうです。
それは、熊が人間に慣れるということで、その場合に、事故が起こる可能性が高まるのだそうです。

このことは、お世話になっている大山さんが、翻訳されたベア・アタックス(2巻・北海道大学図書刊行会)に本当に詳しく書かれています。

これまで、人間社会で生まれて育ってきた自分にとって、「野生動物が暮らす」とはどういう事なのかを痛切に感じた時間でした。
アラスカは、人間の手がほとんど入っていない、自然の営みが残っている場所です。
その中に身を置くことは、価値をひっくり返されるような感覚をたたき込めれたようなものでした。

夜は、また、豆雑炊。
食堂テントの中でちょっとびくびくしながら食べます。

食事の後、たき火をする事にしました。
たき火は、厳しいルールがあります。
たき火そのものは禁じられれていません。
火事にならないように河原で行うことはもちろんですが。
焼け残った炭は、来年、雪解けで流れた時に人工物として景観を壊すので、
灰になるまで焼かなければなりません。

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きちんとルールを守れば、たき火もできるのです。

松本さん、白樺の皮を使って見事に火をつけます。
北極圏で見る炎は、日本で見る炎と同じように安らぎを与えてくれました。

もちろん、蚊対策にも少し有効なようで、煙が直接来るところでは、蚊の数も少なくなります。

松本さんの様子を撮影しながら、なんやかやと語りあいました。

北極圏の原野でたき火をしていることが、信じられません。

たき火が終わったのは、夜の12時20分。

もちろん、空は明るく、あたりは昼間状態。
それでも少し、陽が陰り始めます。

夜1時。
テントの中からみると、すーーっと霧が僕らのテントに向けて降りてきます。
昨日のリベンジを果たさなくちゃ。

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とカメラを持ちだし、撮影。

霧は、山手から僕らのテントに向かって、低く、幻想的に降りてきます。
本当に美しい風景でした。

撮影していると松本さんがカメラを手にやってきます。

「おっ、これはシャッターチャンスか!」と思っていると。

僕の撮影しているところを記念に撮ってくれるとのこと。
あー、撮影されるのは気が重い。なんて、勝手な事を考えながら撮影続行。
本当に美しい光景が撮影出来ました。

しかし、それにしても寒い。

しかも、寒いのに蚊がまだ飛んでる。

どんどん、蚊は増殖しています。

朝2時シュラフにもぐりこみます。

服は、フリースなど4枚重ね着しているけども、寒いのです!
シュラフも冬使用のもの。

でも、体がガタガタ震えて眠れないのです。

数分おきに目が覚めて、体を触ってみるけれど、
いつまでたっても体が冷たいのです。

北極圏のほんの一部を体験しただけですが、自然の厳しさが身にしみた1日でした。

・・・とか何とかいいながら、朝9時半まで寝てました。

爆睡!?