red orange yellow green blue pink

取材2日目 北極圏最北東部アイチリックに着く

金曜日, 7月 2nd, 2010

アイチリック 北極圏に着陸したカークさんのセスナ

7月2日

さあ、いよいよ松本さんがキャンプする北極圏に向けて出発です。
松本さんがキャンプしているのは、アイチリックと言う北極海まで目と鼻の先、カナダ国境。
アラスカの最北東端ともいえる場所です。
そんな地の果てのような場所で松本さんは撮影をしています。

さて、そこまで辿り着く方法ですが、
まず、アンカレッジからフェアバンクスまで飛行機で移動します。
いわゆる私たちが乗っている飛行機です。
フェアバンクスに着くと、小さな飛行機会社に向かいます。
ここまでは、大山さんの奥さんに引率?して頂けるので安心です。
大山さんありがとうございます!

(アラスカは、とにかく、とにかく、広くて、どこに行くにも、車がなくては、とてもじゃないけど行けません・・・。というか、車じゃいけない所ばかり)

ライトエアに着くと・・・。
まあ、バンガローのような・・・。
日本の空港をイメージしてはいけません。
乗り合いバスの駅をイメージして下さい。
部屋に入ると、いかにもワイルドなアドベンチャーを楽しんでやるぜ!的なタフそうなアメリカ人と、
現地の人たちが座っています。
この段階で、若干、心はひるんでいます。
こんなひ弱な日本人で大丈夫だろうか・・・。

荷物は、すべて重量を量り、その重量計に自分も上がります。
体重を計るのです。

待つ事、1時間半。
大山さんも帰り、自分一人。
心細い。

たくさんいたワイルドな冒険野郎的な人たちは、5,6人ずつ飛行機に乗り、どんどん減っていきます。
残るは、ネイティブの人と、か細い日本人の自分だけ。

すると、受付の中から水筒と弁当を持った背の高いおじさんが出てくると、
やにわに、「アークティックビレッジ」と一言。
ちょっと、アゴをしゃくって「ヘイ、皆、行くぜ」みたいな・・・ポーズ。

すたすたと飛行機に向かって歩き始めます。
現地の人が立ち上がるので、自分も「多分、これだろうなあ、これに違いない。」と言い聞かせながらついていきます。
もし、間違えたら、北極圏で迷子になってしまいます。

飛行機は、小さなセスナ。

僕の荷物が積み込まれています。
間違えないのでほっと一息。

飛行機は、荷物でいっぱいで、人間は隙間に座らせてもらう感じ。
荷物を乗せ終えると、順次乗り込んでいきます。
最後に乗ったので、一番前の席に座れました。
お客さんは、5人。
でも、機内はいっぱいです。
とにかくせまっ苦しく、「おい。と手を伸ばすとパイロットに触れる距離」

撮影機材は、60キロ程度でしょうか。
出来る限り減らして、残りはアンカレッジの大山さん家に置いてきました。

背の高い、おじさんは。
手慣れた手つきで、スイッチをいれ、ヘッドフォーンを耳にします。

飛行機は、いとも簡単に、まるでバスが出発するように離陸します。

目の前には、口では言い表せない光景が広がります。
手つかずの大自然が見渡す限り広がります。

美しい緑と、きらきらと光る湖。
雪の残る山々。

この光景を語り始めるときりがないので・・・。

・・・と、パイロットのおじさんをみると、見事に食事をしているではありませんか。
上手に水筒からお茶を汲み、パクパクとサンドイッチみたいなものを食べています。
さすがです・・・。
余裕です・・・。

天候も良く、飛行機もあまり揺れる事もなく・・・。

それにしても、こんなところに人が住んでいる。
集落がある。と言う事が本当に驚きです。

リラックスしきったパイロットのおかげで、僕もリラックス・・・。

約1時間半で中継地のアークティックビレッジに到着。
着陸したのは、もちろん、飛行場

と言っても、滑走路は砂利道で、まあ、ただっぴろい農道に着陸したような感じでしょうか。

松本さんからは、「途中、飛行機は、何カ所か止まるから、間違えて降りないように」と言われていたので、
ちょっと心配です。

しかし、木造の家があって(田舎にある無人の駅のような、中はがらんどうの建物)、そこに、アークティックビレッジ、ビジターズハウス。
と書かれていました。

間違いなく、アークティックビレッジです。

今日のお客さんは、アークテックビレッジに住む人と僕だけだったみたいです。

背の高いパイロットのおじさんは、すぐに飛行機に乗り、今度は、フェアバンクスに行く荷物と人を乗せて、出発します。

アークティックビレッジ空港

実は、来る前に松本さんから、
「もし天気が悪いと、チャーターしているセスナが行けないことがあるので、
セスナが迎えにこない場合は、テント張って適当に寝てて下さい」
となんとも心細くなる連絡があったのです。

アークティックビレッジ空港に降ろした僕の荷物

いざとなったら、テントを張って、飛行場?で一泊する覚悟で・・・ヘナヘナ

飛行場には、大きなバッグパックを持った、おじさん・・・と言うよりおじいさんチームがセスナを待っています。
ワイルドです!
日本には、こんなおじいさんいませんよ。
熊の出る北極圏を大きな荷物を持ってキャンプするおじいさんなんて、絶対にいませんよ。
なんでこんなにワイルドなんだろう・・・。

しかし、なんともいい天気、のんびり待とう。

と腹をくくり待っていると、セスナが・・・。

セスナから降りてきたこれまたおじさんが、
「*‘+*‘?+<+>+*」叫んでいます。

「僕の事?」

さらに叫んでいます。

「*‘+‘lplp`>+**・・・ノリオ!」

どうも、僕の名前のヒデアキが覚えられなかったらしいのです。

アメリカ人にとって、3文字以上の名前はどうも禁物みたいです。
ボブとかドンとか。

それじゃあ、僕はどうすればいいの?

ヒデ?

これも言いにくそう・・・。

ひー

これじゃ、悲鳴だし・・・

結局、なんだかんだで、イトーに落ち着いていました。

僕を乗せるために来た飛行機だとやっとわかり、重い荷物を持って飛行機に近づきます。

飛行機からは、北極圏のどこかでキャンプをしていた、いかにもタフそうな人たちが巨大なバックパックを下ろしています。
北極圏を旅してた様子です。
ワイルドです。
何度も言いますが、北極圏にはグリズリーがたくさん住んでるのです。

しかも、北極圏なのです。
北極、ではありませんが、圏なのです。
寒いし、歩けど歩けど、とてもじゃないけど、人家なんかない場所なんです。

僕の荷物を載せると、空き地の隅っこにあるガスタンクから、カークさん給油を始めます。
「1ミニッツ待て」と言って給油を始めましたが、なかなかいっぱいになりません。

まあ、考えてみれば、ガス欠なんて、ありえない。

「ちょっと、すんませーん。ガス欠なんで止めて待ってるんでえ、申し訳ないんだけど、ポリカン一つ持ってきてくれない」
なんて、ありえません。

ガス欠、イコール、天国です。

カークさん、準備、OK。

いざ、セスナに乗り込みます。
室内は、まあ、タクシーの前の席の3分の2の長さのシートに運転手さんと一緒に座る感じ。
手を伸ばせば、と言うか、手を出せば、すべてのスイッチに触る事が出来ます。
足を組もうものなら、すごく大事そうなレバーに確実に3つくらいあたります。

シートベルトをして、ヘッドフォーンをして、

さあ、次なる場所へ離陸です。

次なる場所は、松本さんのキャンプするアイチリック。

またもや、飛んだ瞬間、目の前には、絶景が広がります。

広大な緑、雪解けであらわになった山、うねるように流れる川、太陽に輝く湖・・・。
かと思いきや、荒涼とした岩肌。
雪の残る山。
低いところを飛ぶので、もう、手が届きそうなくらいです。

涙が出そうになるくらい美しい風景です。

松本さんが、事前に窓を開けて撮影させてもらえるように頼んでもらっていたので
窓を開け、撮影します。

カメラが吹き飛びそうなすごい風圧。

撮影開始!

本当にこんな風景があるのでしょうか。

感動の連続です。

飛ぶ事、約1時間。

北極海のわずか手前に、本当に小さな小さな平地が。

平地と言っても、もちろん、草原ですよ。

ちょっと考えると、怖いことです。

最初に降りる時は、相当慎重に降りるそうです。
だって、草はらと言っても、本当にでこぼこで、さらに、岩なんかあってもおかしくない。

松本さんのテントがぽつんと見えます。

そして、松本さんを発見!
思わず、うれしさがこみ上げます。

松本さんがいたーーー!!!!!

飛行機は、見事に着陸。

草の上をごつごつと走りながら、松本さんに近づきます。

近くづいてきた松本さんの顔は、日本での顔とはまったく違います。

あの、アークティックビレッジの飛行場で待っていた、タフ野郎と同じたくましい顔です。

こんなにも違うものかと驚きました。

松本さんのフォトライブの笑いをとるところで、
『冒険みたいな事をして撮影している写真家と言えば、
ひげもじゃで、ごつい人物を想像するでしょう』

と言うところがありますが、
ある意味、ひげもじゃではありませんが、
明らかに陽に焼けたタフ野郎の顔です。

まあ、それは置いといて・・・。

急いで荷物を降ろします。

カークさんは、荷物を降ろすと急いで帰って行きます。
この時期、とにかくカークさんは超多忙なんだそうです。
夏めいっぱい働いて、冬休むんだそうです。

松本さんも僕も、話したい事がいっぱいあるのですが、
とにかく、松本さんにマイクをつけて、
その声を取材しないといけません。

取り急ぎ、機材を組み立てます。

・・・しかし、たくさんの荷物でままならず、いらいら・・・。

松本さんに「あわてなくていいですよ」と言ってもらいながら、
なんとかカメラのセッティングは、OK。

ところで、今回の番組の為の屈強な撮影クルーを紹介しましょう。
選りすぐりのタフ野郎たちです。

番組を制作するディレクターは、ベアー伊東。
そして、カメラ2台を駆使し、撮影にあたるキャメラマンは、ムース伊東。
わずかな音も聞き逃さない音声マンは、カリブー伊東。
そして、ヘビーな荷物もヒョイと背負い、三脚をキャメラマンの指示通りに設置し、原野を走り抜けるアシスタントは、トド伊東。
そして、80キロ近い荷物を担当するシェルパーは、モスキート伊東。

・・・そうなんです。

一人なんです・・・。

まあ、一人でぼちぼちがんばりますよ。

何とかなるさ・・・。

改めて、キャンプ周辺を見渡すと、おごそかともいえる風景。

美しい川。
その周りに平原が広がり、その周りを高い山がとり囲んでいます。

木は一本も生えていません。
見渡す限り、一本たりとも木は生えていないのです。

高い山が連なる風景に、木が一本もない。
これは、なんとも不思議な風景です。

アイチリックの平坦な滑走路?の脇に、なぜだかテントが2つ。

僕 「松本さん、誰かキャンプしてるんですか?」
松本さん 「いえ、僕一人ですよ。あれは、食堂テントです。」

北極圏でキャンプする時には、食堂テントが必要なんです。

なぜかというと、それは、熊に襲われないため。

食べ物を寝ているテントに置いておくと熊に襲われる可能性があるのです。
とても危険な事です。

生活テントと食堂テンの距離は、100メートル以上。

しかし、何かあるたびに100メートルを歩かなければなりません。
何かと面倒です。

そして、各テントの周りには、電気の線がはりめぐらされています。
それは、熊よけの電線。
触ると、バチッと電気が走り、熊が驚いて逃げる。
というものなんです。

しかし、これも、いつもまたがないといけないので、
何かと面倒・・・。

この面倒、面倒・・・と言っているうちは、幸せでした。
この面倒・・・が翌日には、神の助けのように感じるようになるのです。

松本さん、早速、僕のテントの設営を始めてくれます。
テントは、内側は、蚊帳みたいなもので、その上に屋根が付いたようなもの。
何だか、こんなスケスケテントで大丈夫なんでしょうか。
北極圏なのに寒くないんでしょうか。

と思いきや、暑い!
暑い!

なんだこりゃ!

暑いぞ!

北極が目の前なのに暑い!

なんだ、北極圏は、暑いのか。
なーーーんだ。

(こんな油断も、知らないが故。アラスカの気温は、僕のこれまでの常識では、範疇になかったものでした)

とか何とか、考えているうちに、
あっという間にテントの設営は終わり。

ycyeyy0016.JPG

さてさて、
僕が無事着いた歓迎も含めて食事です。

松本さん名物の食事。

とにもかくにも、食堂テントまで歩いていきます。
これが、遠い遠い・・・。

さらに、水を汲みに川まで行きますが、
これまた、遠い遠い・・・。

さぞかし美しい川のせせらぎが・・・と思っていたら、
残念ながら、数日前に上流で雨が降ったらしく、それまで透明だった水は、濁っています。

松本さんは、「濁って残念だ」と言いながらも、濁った川の水をごくごくと飲みます。

食堂でのランチは、毎日、朝晩食べる豆のごはん。

たった5分で出来上がります。

豆と言っても、鳥の餌のように砕いている豆。

お米は、1分炊くと出来上がる特殊な米。

松本さんは、申し訳なさそうに苦笑いしながら作ってくれます。

すでに2週間それを食べ続けている松本さんは、
ふりかけで味を変えるという荒業で工夫をしていますが、
そう味が変わるものでもありません。

「いただきまーす!」

豆雑炊。と言った方がいいと思います。

でも、松本さんが言うほど悪くない。
でも、これが何日もつものか・・・。

せまっ苦しいテントの中で向かい合って、豆雑炊をすすります。

松本さんからは、とにかく食べ物の匂いのするものは、いっさい自分のテントに置かない事。
すべて、食堂テントに置く事。を教えてもらいます。

それから、歯磨き粉をつけて歯を磨いた場合は、近くでうがいをしない事。
その場合は、川まで行く事も。

臭いを熊がかぎつけると言うのです。

ところで北極圏と言うと、氷河。
と思っている人が多いと思いますが。
僕もその一人でしたが。

短いですが、北極圏も、夏は夏。
日差しはきつく、暑いのです。
半袖でも、汗をかきます。

ところが、物陰にいくと途端に寒い。

また、風が吹くと、これが冷たい。

朝晩では、汗をかく暑さから、震える寒さ。

とにかく、温度差が激しいのです。
アラスカの気温差攻撃。
この気温差攻撃が、ぼけっとしている僕がピンと来るまでに10日以上かかってしまいました。
それは、僕の既成概念にまったくないシチュエーションだったから・・・なのか、ただ、ボケてるからか。
多分、後者です。

アラスカは、地域によって平均気温の差はありますが、どこにいっても温度差に悩まされます。
いつも、服を脱いだり、着たり、脱いだり、着たり。
脱ぐと荷物が増えるし。
脱がないと暑いし、
着ないと寒いし・・・。

食事も終わり、松本さんはカメラを持って、いざ出発。
川沿いに登って行きます。

僕は、カメラ2台に三脚、機材を背負って・・・。
それだけで、足にずっしりと重さが加わります。
しかも、撮影しながら歩くと、ちょっと膝を曲げた状態で、
衝撃を抑えなくてはなりません。

さすがのベアー伊東も、堪えます。

というより、ひ弱な伊東は、2,30歩歩いた段階で、
ゼーぜーと息が上がっていたのです。

美しく見える緑の平原は、実際に歩いてみると、
驚くほど歩きにくいことが分かりました。

何と表現していいのか。
ぼこぼこなのです。
ぼこぼこといっても、並みのぼこぼこじゃない。

直径50センチ、高さ30センチの土の塊を20センチおきに置いている感じ・・・。
うーーん、ちょっと表現が難しい。

とにかく、ぼこぼこなんです。

北極圏の原野を歩く松本さん

実は、この僕、2回ばかり派手に転げました。

こんなに見事にこけたのは、子どもの時以来のような気がします。

背負った重い機材と、撮影しながらの歩き、足が踏ん張れなくなったところに、
ぼこぼこ土の塊に足をとられてしまい、ごろり!
機材は、大丈夫でした。

川沿いに歩いていくと、川に氷河が残っています。
美しいマリンブルーに輝いています。

近くに見える場所も歩いてみると、はるかに遠い。

狼の巣があると言う場所の近くまで来ましたが、
急いで帰らないといけない時間になってしまい、
引き上げます。

・・・なんで、急いで帰らないといけないのか。

それは、松本さんが、奥さんに電話をするため。

松本さん、電話をめがけて、黙々と歩きます。

黙々。

黙々。

松本さん、速い。

ゼーぜー。

ゼーぜー。

ステーン。
ベーア伊東が、大回転。

結局、3時間余り歩いて、テントまで帰った時にはへとへと。
松本さんはタフです。

松本さん、電話の後は、なんともすっきりとした顔に・・・。
愛の力は何より強い!

さて、夕食です。
ちょっと濁った川の水をブレンドした、豆雑炊。

僕は、タラコ味ふりかけをかけてみました。

甘辛い味、しかし、やっぱり豆雑炊は豆雑炊でした。

夜、10時30分。

星空を眺めながら・・・と思いきや。

10時30分は、まったくもって昼間。
日本で言うところの夏の4時。
と言ったところでしょうか。

勘が狂います。

いつまでも起きてられそうです。

しかし、いつも寝つきが悪いからなー。

テントの中でまんじりともできない。なんて最悪だし。

松本さんから、アイマスク必須です。と言われたので、2つも用意してきてるから。
でも、どこ入れたかなあ。

寝てました。
多分、即席3分。
即効。

テントの外は、真昼間。

そして、夜中。
寒いので目が覚めました。

冬用の寝袋に入っているのになぜだ?

まるで、冬です。
(後で聞いた話では、摂氏2,3度でした。冬に蚊帳みたいなテントで寝ている。という状態でしょうか・・・)

それに、マットからはみ出した手や足が妙に冷たい。

これは、昼間、地面に腰かけた時にいつも感じていた事なんですが、

その原因を聞いて、ちょっとビックリ、松本さんによると、地面に見えるのですが、
実は、永久凍土なんだそうです。

そうなんです。
氷の上だったんです。

どうりで冷たいはずです。

北極圏は侮れません。

川の流れと風の音・・・そして、若干の蚊の飛ぶ音。
北極圏、最果ての地で、初めての爆睡でした。