2007.10.01

高校サッカー取材に想う

Author: ロッベン江刺

「もう一度、PKを蹴りたい」

5人目のキッカーとして登場した新居浜工業のキャプテン・岸田。
「これを決めれば全国・・・」
高校生でなくともこの思いを邪念と切り捨てるのは酷だろう。

6月4日 済美と新工の県総体決勝。
両チームとも無得点のまま延長でも決着つかず。
相手チーム5人目まで全員が成功したPK戦。

岸田のショットが右ポストに弾かれた瞬間、
済美イレブンは喜びを爆発させ
岸田はその場に崩れ落ちた。
スポーツが持つ残酷な一面だ。

全キャプテン、全監督が揃う抽選会場で
そのシーンが正面のスクリーンに映し出された。

実はPK失敗のシーンは当日ニュースでカットされていた。
しかし抽選会場用では、
岸田が泣き崩れるシーンを大会の歴史を振り返るラストにはめ込んだ。

後日、
練習場を訪れた際
岸田本人から言われたのが冒頭の言葉だ。
続けて力強くこう言った。
「抽選会で僕のPK失敗シーンが流れたでしょ。
あの時はめちゃくちゃショックでしたけど
逆に絶対にやってやるぞという気持ちが湧いてきたんです」

人は一生で何人の人生を変える事が出来るだろうか。

苦しくなった時、
あと一周だけ走ろうとか
あと少しがんばろうというきっかけを作れたとしたら
冥利である。

我々は主役ではない。
ただ、グラウンドにいる小さなロベルト・バッジオの想いを
見逃してはならない。