3月のショートショート

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第3週は、どなたにでも読みやすい、ショートショート作品のご紹介と朗読です。

3/19放送にご出演いただいたのは、松山おはなしの会 森本邦江さん でした。

 

今回、朗読・ご紹介いただいたのは、愛媛県出身のショートショート作家 田丸雅智さんの作品で、

双葉社『俳句でつくる小説工房』に収録されている『陽炎の仕立屋』。

先月に引き続き、『俳句でつくる小説工房』からの一編。読者から寄せられた3000を超える句を俳人の堀本裕樹さんが選句し、選評を加えた上でショートショート作家の田丸雅智さんが小説化したという、言葉のプロがコラボした1冊です。

今回ご紹介した『陽炎の仕立屋』は、主人公と仕立屋の祖父のお話です。

祖父の入院による仕立屋の廃業、そして祖父の死。浮かぶのは、子どもの頃に遊び場にして叱られた自宅兼仕事場での思い出、祖父と過ごした日々の思い出。そんな祖父からの贈り物が遺されていて。

心が温かくなるけれど切なくて不思議・・なんだか「陽炎」のイメージにぴったりの物語です。

森本さんも朗読しながら、自分の子ども時代の懐かしい風景を思い出して、不思議な世界に自分も紛れ込んだような気分になった素敵な作品だった、とのこと。

みなさんも森本さんの朗読で全編をお楽しみください。

ハルキスト女子高生

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3/12放送のゲストは、松山西中等教育学校5年 藤野実花さん でした。

藤野さんは、2022年「語り伝えたい 美しい日本語暗唱コンテスト」高校暗唱の部 で 最優秀 を受賞。

1年生から放送部に所属、毎年エントリーして、入賞は果たしていたものの、ラストチャンスとなる今年は何としても最優秀をとりたいと、他の大会とのスケジュールの兼ね合いが厳しい中、どうしても!と出場したそうです。

暗唱した作品は、芥川龍之介著『白』。芥川作品はよく暗唱で取り上げられるそうですが、藤野さんは初挑戦。どうせなら自分が知らなかった作品を取り上げよう、と選んだそうです。

番組でもこの作品についてお話しいただくのかと思いきや、ぜひこちらを!とピックアップしてくれたのが、

『騎士団長殺し』新潮社 村上春樹/著。

 

小学生高学年時にお母さんに勧められ、「こういうの読んだことない・・大人が読む本だ!」と読み始めたところ、夢中になって、それ以来 村上春樹さんの大ファンになったんだとか。

「騎士団長殺し」で特に印象に残っているのは、騎士団長と主人公が初めて対面するシーンで、騎士団長が「小さいけれど、切ればちゃんと血が出る」と言うセリフ。自分の目に見えないような存在にも生命がある、自分は「生きている」ということを漠然としかとらえてなかったけれど、なぜそれを意識したことがなかったのか、とハッとしたそうです。

村上作品は、どれもクールで俯瞰で物事をみているかんじがあって、読むたびに発見があるし、自分自身のことも客観的にみられるようになった気がする、と藤野さん。

ハマりにハマって、様々な作品に出てくる音楽を聴いていたら、いつの間にかジャズがメインの渋いプレイリストが出来上がって、ギターやサックスにも挑戦してみたい、と興味がどんどん広がっているとのこと。

熱量多めなハルキストのお話、とっても楽しく聴かせてもらいました!

注目の人物がもととなった小説

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毎月第1週は学校図書館関係者からのおすすめの1冊をご紹介いただいています。

3/5放送のゲストは、済美平成中等教育学校 図書館司書教諭の玉井喜久子さんでした。

 

ご紹介いただいた本は、『ボタニカ』祥伝社 朝井まかて/著。

植物学者・牧野富太郎さんの伝記を元にした小説です。

玉井先生は草木が好きで、高知の牧野植物園には3回ほど行ったことがあり、いつも時間が足りなくなるほどだそう。春に向けて植物園を訪れる人も多くなるし、4月には牧野富太郎さんが基となる朝ドラも始まることもあり、きっとこれから話題にもなる人物です。

小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭し、東京大学理学部植物学教室に出入りを許されるも、周囲から疎外されたり、助けられたり・・。莫大な借金や学会との軋轢、波乱万丈な牧野富太郎さんの人生が綴られています。

小説として場面がドラマチックに描かれているので、とても読みやすく、牧野先生が好きな方はもちろん、全く知らない人にもおすすめです。

日本植物分類学の基礎を築いた一人として知られ、「牧野日本植物図鑑」は現在でも研究者や愛好家の必携の書であるといわれています。

この本をきっかけに、関連書籍や牧野先生の刊行した植物図鑑なども見てみてほしい、と玉井先生。桜やチューリップなど、名前を知る身近な花々だけでなく、普段気にしていない足元の植物にも気に留めるようになるかもしれません。

これからの季節、そんな時間を持ってみてはいかがでしょう。

 

 

アロマで今の自分を知る!?

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2/26放送のゲストは、アロマ調香師 高橋真美さん でした。

高橋さんの調香した香水が、去年、全国を対象に開催された フェロモン香水コンテスト男性部門グランプリを受賞しました。

香りというのは、脳に情報が届くまでの時間がわずか0,2秒といわれていて、五感の中でも最も本能的で原始的な刺激なんだそう。だから、香りが脳を活性化したりリラックスさせるということがいわれているんですね。

香りの元となるのが花なのか葉なのか、どんな環境で育ったのかによって、「アロマ」というのは実に様々で、それをどう合わせるとどういう情報が脳に届くのか、しかも人によってその感じ方が違うのが、調香のすごいところ、と高橋さん。

グランプリを受賞した香水も、使う時にどういうストーリーが生まれるかうかべながら《The One 〜運命の人〜》というテーマで調香したそうです。

普段、個人のオリジナル香水の調香も行っている高橋さん。セッションでじっくりお話を聴きながら、今この人が必要としているのは何かを香りに当てはめて香水を創ると、その人にぴったりな、その人の背中を押してくれるようなものが出来上がるといいます。

 

そんな高橋さんおすすめの1冊は、『アートとサイエンスの両面から深く学び理解する 香りの「精油事典」』BABジャパン 太田奈月/著。

成分(サイエンス)の根拠から効果効能を学び、想像力(アート)を活用して、精油を選ぶ、というユニークな精油事典です。

特にこの本が面白いのは、精油を擬人化したストーリーで紹介し、精油について直感的に理解できるところ。例えばユーカリなら、あっという間に大きくなる成長力のある木なので、生命力がある・行動力があるというイメージに繋がってきます。また、成長を妨げるものを寄せ付けないように発する香りは我が道を行くイメージ。ちなみにそれが強い抗菌作用を持つ香りとなっている、というふうに、55の精油について詳しく紹介されています。

多くの人が馴染み深いレモンやオレンジ、ラベンダーやペパーミント、あまり馴染みのない精油も、どれも興味深く説明されていて、「辞典」ですが、読み物としても面白い1冊です。

高橋さんのお話を聞いていると、香水とまではいかなくても、お掃除やお風呂など、日常生活に香りを取り入れるだけでも生活が豊かになるかも、と感じます。

「香り」のある生活、ぜひ試してみませんか。

 

2月のショートショート

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第3週は、どなたにでも読みやすい、ショートショート作品のご紹介と朗読です。

2/19放送にご出演いただいたのは、松山おはなしの会  高橋 佐知子さん でした。

 

今回、朗読・ご紹介いただいたのは、愛媛県出身のショートショート作家 田丸雅智さんの作品で、

双葉社『俳句でつくる小説工房』に収録されている『写真の友』。

『俳句でつくる小説工房』は、世界一短い詩のかたち・俳句と、世界一短い小説のかたち・ショートショートがコラボレーションしたというもの。
読者から寄せられた3000を超える句を俳人の堀本裕樹さんが選句し、選評を加えた上でショートショート作家の田丸雅智さんが小説化しています。WEB上で読者と言葉のプロが一緒になって物語を生み出した新しい試みから生まれた1冊です。

 

今回ご紹介した『写真の友』は、ある男性と親友とその家族のおはなしです。子どもが生まれて年賀状に家族の写真を載せることにした親友。子どもが大きくなっても年賀状に載せるための家族写真を取り続ける!と言っていたのに、早逝してしまい、もうその家族との縁もなくなるだろうと考えていた男性だったけれど、喪が明けてからも、年賀状は欠かさず届けられ、ある年には驚くべき写真を見ることになる・・。

それはどんな写真なのか。ショートショートらしい不思議な展開がひろげられるのですが、ラストはせつなくなるような心が温かくなるような物語です。

高橋さんの朗読で全編をお楽しみください。

眠る「人魚」

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毎月第2週は、児童・生徒・学生の方からその世代の皆さんへのおすすめ本をご紹介しています.

2/12放送のゲストは、愛媛大学教育学部付属中学校 3年 スジュ清心さん でした。

漢字で、清い心と書いてセマさん。お父さんがトルコ人で、お母さんが日本人。トルコ語で「セマ」は「空」という意味だそうです。中学3年生とは思えない落ち着いた雰囲気ながら、心の清らかさがそのまま現れているようなひたむきなお話しぶりで、とっても素敵な方でした!

 

おすすめの1冊は、『人魚の眠る家』幻冬舎 東野圭吾/著。

離婚寸前の夫婦のもとにもたらされた「娘がプールで溺れた」という悲報。脳死診断がくだされた後、過酷な運命に苦悩し、狂っていく母親。

2015年に発売された、東野圭吾作家デビュー30周年記念作品であり、のちに映画化もされました。

母親の視点、他の人の視点、それぞれに物事の印象が違ってみえてきて、登場人物全員に共感してしまうくらい物語に引き込まれたそうです。

あまり本を読む方ではなかったというスジュさん。この本を手にとって読み始めてみると、一気にはまって時が経つのを忘れてしまうほどで、読書が好きになるきっかけとなった1冊なんだとか。

とてもデリケートで難しいテーマなのですが、ラストまで見事に書き上げられている!という印象の作品です。

ぜひ、手に取ってみてください。

 

 

 

はじめての

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毎月第1週は学校図書館関係者からのおすすめの1冊をご紹介いただいています。

2/5放送のゲストは、済美平成中等教育学校 図書館司書教諭の玉井喜久子さんでした。

 

おすすめいただいた本は、『はじめての』水鈴社 島本理生・辻村深月・宮部みゆき・森絵都/著。

人気の直木賞作家4人が「はじめて〇〇したときに読む物語」をテーマに描いた作品をまとめた1冊です。

“小説を音楽にする”ユニットYOASOBIとのコラボレーションで、4つの物語が音楽にもなっていて、映像と合わせてYou Tube配信でも楽しめるそうです。新しい試みで楽しみ方が広がる4つの物語、ぜひ読んだ後に音楽を聴いてほしい!とのこと。

 

特に玉井先生が取り上げてくださったのは、バレンタインにむけてもおすすめの物語、森絵都さんの「ヒカリノタネ」。

こちらは、「はじめて告白したときに読む物語」です。

幼馴染が大好きで、過去4回にわたり告白したけど振られている、という女の子。タイムトラベルをして過去の告白を消し去ろうとするのですが、どんな展開が待ち受けていて、恋の行方はどうなるのか、主人公と同世代も大人世代もなんだかキュンとしながら楽しんで読める物語です。

玉井先生は、森絵都さんのことを図書館の仕事を始めた頃に知り、「何でこんなに中学生の気持ちが分かるんだろう」と衝撃を受けたそうです。自分に自信のなかった中学時代に森絵都さんの作品に出会えていたら、心が救われたのではないかと思うほどだった、とのこと。

 

7年ほど前、某新聞社主催の「オーサービジット」という、オーサー(本の作者)が全国各地の学校を訪ねて子どもたちに「授業」をするという企画があって、来てほしい作家さんに色紙に生徒たちがメッセージしたためて応募したことがあったそう。その時、メッセージを送ったのが森絵都さんで、なんとなんと全国の応募校の中から済美平成校が選ばれたんだそうです!

会場となった図書館は生徒であふれ、オーサーの授業では課題として出された文章をひとりひとり添削してくれたそうで、みんな大興奮。

そのなかで、森絵都さんから、「本をたくさん読んでください。そのことが将来きっとあなたを助けてくれます。」というようなお話があったそうです。何かの役に立つ知識だったり、辛い時に支えてくる言葉だったり、忘れていたことを思い出させてくれるものだったり・・。いつか、自分を支えてくれるものになる、と。

以前、その「授業」を受けた卒業生が教育実習生として母校を訪れた時に、森絵都さんの話がすごく印象的で心に残っているということを玉井先生にした人がいたそうで、本当に素敵な言葉だな、と改めて思いました。

 

全国高校ビブリオバトル愛媛県大会の準チャンプ

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1/29放送のゲストは、全国高校ビブリオバトル愛媛県大会の準優勝 松山西中等教育学校4年 公原ひよりさん でした。

惜しくも優勝は逃した公原さんですが、同率1位の決選投票での結果だったそうです。

決選投票は会場の皆さんにどちらがよかったかその場で再投票してもらう形式で、会場の皆さんのペンを走らせる音を聞きながらドキドキが止まらなかったとか。

決選投票で争った優勝者は、同じ学校の先輩。恐れ多くも先輩と肩を並べさせてもらって、本当に貴重な経験でした、とお話ししてくれました。

 

そんな公原さんのおすすめ本は、『死にがいを求めて生きているの』中央公論新社 朝井リョウ/著。

性別も年齢もバラバラの「生きがいって何だろう」と思っている6人の登場人物たちの物語です。

公原さんがビブリオバトルに挑戦してみることになったのも、この本の登場人物がビブリオバトルに関わる物語があって、実際にはどんなものなんだろうと思ったことがきっかけなんだそうです。

そしてその登場人物のセリフでとても印象的だったものがあって、「私今なら、生きがいなんてなくても生きていけるかも」という部分を読んだ時に、今、確固たる「生きがい」や「目標」がない自分を振り返って、生きがいがなくても大丈夫なのかも、と なんだかホッとしたんだとか。

生きがいを求めて辛くなっていたり不安になっている人たちに、とても響くセリフだと思います。

生きがいは求めすぎてはいけない、そのことを優しく教えてくれる1冊です。

「桐島、部活やめるってよ」「何者」など、若者の感覚をみずみずしくそして鋭く描いてきた作者の朝井リョウさん。

平成を生きる若者たちを描いたこの作品も、さすがという物語となっています。

ぜひチェックしてみてください。

 

 

全国高校ビブリオバトル愛媛県大会チャンプ

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1/22放送のゲストは、全国高校ビブリオバトル愛媛県大会の優勝者 松山西中等教育学校5年 髙田 咲弥さん でした。

本を読むのが好きで、ビブリオバトルでどんな本がどのように紹介されているのか興味があって、初めての参加を決めたそうなんですが、その結果が県大会での優勝!

全国大会も、同じように本が好きな高校性たちのおすすめ本の書評が聞けるのが楽しみ!とのことでした。

 

おすすめ本は、ビブリオバトルでも紹介した、『決壊 上・下』新潮社 平野啓一郎/著。

ごく平凡なサラリーマンがバラバラ殺人の被害者となり、その容疑者として被害者のエリートといわれる兄が浮上する・・という物語。

タイトルに「決壊」というタイトルどおり、何かが溢れ出る、壊れてしまうということで、誰が決壊してどのようなことが起こるのか、その様子が最初から最後まで包み隠さず書かれてあります。

これまで心が温まる物語が髙田さんにとって、本当に恐ろしくて、今までの読書観が変わる一冊となったとのこと。

殺人事件など、自分の周りにはなさそうなことから、SNSから発展して起こる事件などの身近なことまで、何かが「決壊」していくさまが恐ろしく、色々なことを考えさせられる内容なんだそうです。

この本は2011年発売のものですが、今の時代に改めて読んでほしい1冊だとも。

ぜひ皆さんも手にとってみてください。

 

1月のショートショート

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第3週は、どなたにでも読みやすい、ショートショート作品のご紹介と朗読です。

1/15放送にご出演いただいたのは、松山おはなしの会 平田ひとみさん でした。

仕事以外のライフワークにしたいと思って読み聞かせをはじめてから、松山への引っ越しで「松山おはなしの会」に入会したという平田さん。

おはなしの会に参加することで、人との出会い、本との出会い、様々な新しい出会いを楽しんでいて日々充実している!とお話しされていました。

 

今回、朗読・ご紹介いただいたのは、愛媛県出身のショートショート作家 田丸雅智さんの作品で、

光文社『おとぎカンパニー モンスター編』に収録されている『バイオ手芸』です

この『おとぎカンパニー モンスター編』に収録されている10篇の作品には、誰もが知っている古今東西のモンスターが登場します。『バイオ手芸』はフランケンシュタインをモチーフに綴られた現代ショートショートとなっています。

平田さんは、近未来で人造人間を扱った物語という点から、星新一さんを彷彿させる物語で、田丸雅智さんが星新一さんの孫弟子といわれることに納得の作品だった、とのこと。

モンスター編の作品ではありますが、あまりおどろおどろしさはありません。

いのちについて考えるきっかけになってくれれば、と蘭先生がはじめた「バイオ手芸」。読者にもそういったことを問いかけてくれているような物語です。